趣味人の恋 1 (1~4章)
▼あらすじ
僕は此処「趣味人倶楽部」で恋をした
その人と此処でいっぱい話をした
その人と此処でいっぱい愛を囁き合った
けれど此処以外のリアルな世界で
僕達が逢う事は無かった
今はそれで良かったと思っている
こんな愛の形があっても
良かったと思っている
===================================================
章タイトル: 第1章 はじまり
-----------------------(p.1)-----------------------
僕は林瑛一、50うん歳
もう半分萎みかけたオジサンだ
去年の秋以降、あのリーマンショックのお陰で
世間の景気は最悪
小さな機械屋であるわが社も、【未曾有の大不況】に見舞われた
特に、受注していた設備が完成引き渡しとなった後の1月以降、一日中事務所に居ても、掛ってくる電話は少なく、仕方なしに従業員はお上からの「雇用調整助成金」なるものの支給を受けるため、大幅に休ませている。
けれど、事務所まで休むことのできないわが社では、
助成金の対象とならない僕が、【留守番】となる
が、・・・・・・・・・要は【開店休業】なのだ
仕方ないので?暇つぶしに【ネットサーフィン】と云うことになるのだが
僕は何時も覗いていた個人の釣り人のブログの隅っこに掲載されていた広告で【趣味人倶楽部】のことを知った。
「なんやこれ? しゅみびとくらぶ?(-_-メ)・・なんかイカガワシイのと・・・ちゃうか?」
それが僕にとっての初めてのSNS、【趣味人倶楽部】との出会いだった
-----------------------(p.2)-----------------------
自分で云うのも何だが、割合と慎重派である^^;
時として【間が抜けている】こともあるけれど(-_-メ)・・ホットイテ
何日か入会前に調べるが、別に金が掛る訳でもなさそう
だ・・
【出会い系】とも一寸違う?^^;・・
要は我々アラフィフ世代の中高年をターゲットに、様々な趣味人の集まりとして囲い込み、旅行やイベント等に参加させるのが目的みたい。
ま、押し売りされる様なら辞めればいいし。
「ええい、何とかなるやろ!」と入会したのが
1月の20日頃だったと思う。
まだ会員番号が120,000-番台だったと思う
登録と同時に自分の部屋?が与えられる。
そこで日記や自撮りの写真等を掲載出来た。
日記はエッセイ的のものやら、自分史等テーマは様々。
それを覗きに他の会員が部屋に訪れるわけだ。
まずは自己紹介。
まあ、釣りが趣味ってことしか書くことはなかったけど・・
^^;・・
【ニックネーム・えい吉】
【京都府在住】
【行ってみたいところ】景気の良い所
【特技】妄想 ^^;・・
【似ている人】パパイア鈴木?
その後しばらくは「おっかなびっくり」で
「マイアルバム」を見たり、「日記」を見たりと【汚い足跡】
のつけ放題^^;・・
訪問した人の部屋には其処に訪問した人のニックネームが履歴として表示された。
つまり「足跡」だ。
日記やマイアルバムの写真には拍手マークを入れたりコメントを入れたりする事が出来る。
それ以外に各部屋の伝言板があって、コメントを残すことが出来た。
でも僕は伝言を残すでなく拍手をする訳でなく、相当怪しく見えたに違いない。
それでもそのうち何人かの方が「ご訪問ありがとうございます」と挨拶をしてくれる。
そのたびに【非礼】を詫びる伝言を入れるものの、
それっきり伝言を交わすこともなく数日が過ぎて
行った。
『それじゃ、趣味のコミュニティー』ってことで検索し、関西地方限定
の釣りのコミュンを覗くと、
僕もよく知っている関西の釣りポイントでの釣果や
獲物(自慢?^^;)の写真などの情報が結構入っている
しかし、『慎重派?』いや、モトイ、優柔不断なおっさんは、
コミュンに入会する訳でも無しに、ただ『覗き屋』に徹した^^;・・
・・・・・・・・が、
悪いことは続かないもので?コミュンの主催者の方より
伝言が入り入会を勧められた。
で、すんなりこのコミュに入会した。
しかし時は1月後半、海での釣果がもっとも淋しい時期
であった。
投稿するネタもなく、相変わらず「彷徨う毎日」の繰り返しだった・・
いや、徘徊か?
-----------------------(p.3)-----------------------
相変わらず、「徘徊」を続けるうちに
当然何人か日常的に言葉を交わす人も現れる。
ここの平均年齢はざっと50歳前後ではなかろうか?
たまに40歳以下の方も見受けるが、知り合いになるのは
圧倒的に50~60代となり、ほぼ同じゼネレーションで
あるため、共通する話題も多い訳だ。
そして50代と云えど結構皆【キャピキャピ】してる?^^;・・
なんか高校時代の同級生と話している錯覚に陥ることも
しばしばだった。
特に多いのが『顔文字』入りの文章^^;
50代以下だとまず80%以上の人が顔文字入りの文章となる
平たい文章の中で、感情を入れると云うのか補填すると
云うのか・・
文章自体が軽くなるも否めないが、所詮は?そんな重い
テーマを討論する場でもないので、僕は抵抗なく入って
行った。
そんな中、僕は偶然一人の男性の日記を目にして
立ち止った。
【キリさん 65歳】
【京都府在住】
【好きなもの 餃子の王将・四条大宮店の餃子と大瓶麦酒】
【似ている人 クリント・イーストウッド】
その方のプロフでのお住まいは「京都府」となっていたが
日記を読むと、どうも違うらしい・・
日記の内容は南海の小国トンガと、今住んでいる
NZでのことだ。
僕とは一回りしか年が違わないのに、
トツトツとした口調で、昔を思い出しながら語るその話は、
まるで田舎の爺ちゃんに、囲炉裏端で昔話を聞くような
塩梅。
勿論『顔文字』など、どこにも登場しない^^;・・
訪れた人の中には、『改行をした方が読みやすい』と云う人
もいたが、僕はそれもこの人の『味』の一つかなと思ってい
た。
【同好の士】も増え、その方たちの部屋も覗く。
そこで出会ったのが【北海道在住・ラベンダーの香りさん】と云う
同い年の女性だった・・
-----------------------(p.4)-----------------------
===================================================
章タイトル: 第2章 出会い
-----------------------(p.5)-----------------------
キリさんの日記では、トンガ時代、キリスト教宣教師の船に
乗って、南太平洋の小島から小島へ渡り、
「気が向けば泳ぎ、お腹が減れば海に釣り糸を垂らし」
と、まるで「十五少年漂流記」のような話を次から次へと
聞かせて貰った。
僕は此処「趣味人倶楽部」で恋をした
その人と此処でいっぱい話をした
その人と此処でいっぱい愛を囁き合った
けれど此処以外のリアルな世界で
僕達が逢う事は無かった
今はそれで良かったと思っている
こんな愛の形があっても
良かったと思っている
===================================================
章タイトル: 第1章 はじまり
-----------------------(p.1)-----------------------
僕は林瑛一、50うん歳
もう半分萎みかけたオジサンだ
去年の秋以降、あのリーマンショックのお陰で
世間の景気は最悪
小さな機械屋であるわが社も、【未曾有の大不況】に見舞われた
特に、受注していた設備が完成引き渡しとなった後の1月以降、一日中事務所に居ても、掛ってくる電話は少なく、仕方なしに従業員はお上からの「雇用調整助成金」なるものの支給を受けるため、大幅に休ませている。
けれど、事務所まで休むことのできないわが社では、
助成金の対象とならない僕が、【留守番】となる
が、・・・・・・・・・要は【開店休業】なのだ
仕方ないので?暇つぶしに【ネットサーフィン】と云うことになるのだが
僕は何時も覗いていた個人の釣り人のブログの隅っこに掲載されていた広告で【趣味人倶楽部】のことを知った。
「なんやこれ? しゅみびとくらぶ?(-_-メ)・・なんかイカガワシイのと・・・ちゃうか?」
それが僕にとっての初めてのSNS、【趣味人倶楽部】との出会いだった
-----------------------(p.2)-----------------------
自分で云うのも何だが、割合と慎重派である^^;
時として【間が抜けている】こともあるけれど(-_-メ)・・ホットイテ
何日か入会前に調べるが、別に金が掛る訳でもなさそう
だ・・
【出会い系】とも一寸違う?^^;・・
要は我々アラフィフ世代の中高年をターゲットに、様々な趣味人の集まりとして囲い込み、旅行やイベント等に参加させるのが目的みたい。
ま、押し売りされる様なら辞めればいいし。
「ええい、何とかなるやろ!」と入会したのが
1月の20日頃だったと思う。
まだ会員番号が120,000-番台だったと思う
登録と同時に自分の部屋?が与えられる。
そこで日記や自撮りの写真等を掲載出来た。
日記はエッセイ的のものやら、自分史等テーマは様々。
それを覗きに他の会員が部屋に訪れるわけだ。
まずは自己紹介。
まあ、釣りが趣味ってことしか書くことはなかったけど・・
^^;・・
【ニックネーム・えい吉】
【京都府在住】
【行ってみたいところ】景気の良い所
【特技】妄想 ^^;・・
【似ている人】パパイア鈴木?
その後しばらくは「おっかなびっくり」で
「マイアルバム」を見たり、「日記」を見たりと【汚い足跡】
のつけ放題^^;・・
訪問した人の部屋には其処に訪問した人のニックネームが履歴として表示された。
つまり「足跡」だ。
日記やマイアルバムの写真には拍手マークを入れたりコメントを入れたりする事が出来る。
それ以外に各部屋の伝言板があって、コメントを残すことが出来た。
でも僕は伝言を残すでなく拍手をする訳でなく、相当怪しく見えたに違いない。
それでもそのうち何人かの方が「ご訪問ありがとうございます」と挨拶をしてくれる。
そのたびに【非礼】を詫びる伝言を入れるものの、
それっきり伝言を交わすこともなく数日が過ぎて
行った。
『それじゃ、趣味のコミュニティー』ってことで検索し、関西地方限定
の釣りのコミュンを覗くと、
僕もよく知っている関西の釣りポイントでの釣果や
獲物(自慢?^^;)の写真などの情報が結構入っている
しかし、『慎重派?』いや、モトイ、優柔不断なおっさんは、
コミュンに入会する訳でも無しに、ただ『覗き屋』に徹した^^;・・
・・・・・・・・が、
悪いことは続かないもので?コミュンの主催者の方より
伝言が入り入会を勧められた。
で、すんなりこのコミュに入会した。
しかし時は1月後半、海での釣果がもっとも淋しい時期
であった。
投稿するネタもなく、相変わらず「彷徨う毎日」の繰り返しだった・・
いや、徘徊か?
-----------------------(p.3)-----------------------
相変わらず、「徘徊」を続けるうちに
当然何人か日常的に言葉を交わす人も現れる。
ここの平均年齢はざっと50歳前後ではなかろうか?
たまに40歳以下の方も見受けるが、知り合いになるのは
圧倒的に50~60代となり、ほぼ同じゼネレーションで
あるため、共通する話題も多い訳だ。
そして50代と云えど結構皆【キャピキャピ】してる?^^;・・
なんか高校時代の同級生と話している錯覚に陥ることも
しばしばだった。
特に多いのが『顔文字』入りの文章^^;
50代以下だとまず80%以上の人が顔文字入りの文章となる
平たい文章の中で、感情を入れると云うのか補填すると
云うのか・・
文章自体が軽くなるも否めないが、所詮は?そんな重い
テーマを討論する場でもないので、僕は抵抗なく入って
行った。
そんな中、僕は偶然一人の男性の日記を目にして
立ち止った。
【キリさん 65歳】
【京都府在住】
【好きなもの 餃子の王将・四条大宮店の餃子と大瓶麦酒】
【似ている人 クリント・イーストウッド】
その方のプロフでのお住まいは「京都府」となっていたが
日記を読むと、どうも違うらしい・・
日記の内容は南海の小国トンガと、今住んでいる
NZでのことだ。
僕とは一回りしか年が違わないのに、
トツトツとした口調で、昔を思い出しながら語るその話は、
まるで田舎の爺ちゃんに、囲炉裏端で昔話を聞くような
塩梅。
勿論『顔文字』など、どこにも登場しない^^;・・
訪れた人の中には、『改行をした方が読みやすい』と云う人
もいたが、僕はそれもこの人の『味』の一つかなと思ってい
た。
【同好の士】も増え、その方たちの部屋も覗く。
そこで出会ったのが【北海道在住・ラベンダーの香りさん】と云う
同い年の女性だった・・
-----------------------(p.4)-----------------------
===================================================
章タイトル: 第2章 出会い
-----------------------(p.5)-----------------------
キリさんの日記では、トンガ時代、キリスト教宣教師の船に
乗って、南太平洋の小島から小島へ渡り、
「気が向けば泳ぎ、お腹が減れば海に釣り糸を垂らし」
と、まるで「十五少年漂流記」のような話を次から次へと
聞かせて貰った。
作品名:趣味人の恋 1 (1~4章) 作家名:ef (エフ)