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古都・純情物語 5  (15~16章)

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第15章


瑛子は部屋に戻り、着替えてから食堂の公衆電話をかけた。

自分の実家にする電話なのに、何故が掌に汗が滲んだ・・・

瑛子の心の何処かに後ろめたい気持ちが在ったからだ。

呼び出し音が数回鳴っただけで電話口に母が出た。



『アンタ、なんぇ?誕生日にも近いから家に帰って来るもんやとばっかり

思ってたのにィ! 今まで何処に行ってたんえ?』

『…お母ちゃん、堪忍…友達と…食事してたん…(+_+)…』

『え?アンタ、まさか、しょうもない男がおるんとちゃうやろな?(;一_一)』

『…ち、違う…お、女の友達や(+_+)…』

『女の友達?そんなら宜しい♪(*^^*)瑛子ちゃん♪あんなぁ~♪(^0_0^)』


母は急に猫なで声になった…

瑛子は自分の母親が苦手だった…


( …(-_-;)…ああ、やっぱり…

お母ちゃんが猫なで声になったら、ろくなことないねん(+_+)… )

    瑛子は自分の勘の良さを
    

    呪った…(-_-)/~~~ピシッ!



『あんなぁ~♪(#^.^#)実は瑛子ちゃんにエエ縁談の話が有ってなぁ~♪(*^^*)

ホレ、枚方の叔父さん、叔父さんのお得意さんで、道修町(どしょうまち)の薬問屋が

あってなぁ~♪

そこの次男坊で薬大出はった人が、30過ぎてまだフラフラしてはるんでな、

親御さんが【どこぞエエお嫁さんおらんか?】て叔父さんにたんね(尋ね)はったんやけ

ど、叔父さん、【この話、瑛子ちゃんにどないや?】って言うてくれはったんよ~♪(((^^;)

そいで、アンタに聞いてから、とは言うたんやけど、

叔父さん、あの通りイラチ(せっかち)やろ?

【はよ、釣り書(履歴書)と写真出せ!(--;)】てヤイのヤイの

言うもんやから、お母ちゃん、適当書いて写真添えて出したんやがな~♪(*^^*)

そしたらアンタ、先方さんがエライ乗り気で~~♪(((^^;)

【いつ本人さんに会えますやろ?今度の大安はどないですやろ?

 式は来年の春なら今からでも十分間に合いますなぁ~♪】

と、もうアンタ、やかまし~い♪やかまし~い♪(*^^*)

瑛子ちゃん、どないする?いつやったらエエ?

何着て行く?(*^^*)』

母は一気に喋った…


      (…(ToT)…やっぱりこんな話や…)


尚も母は喋り続ける…

『それでなぁ、その人【緒方太郎】て言わはんねんけど、

浪花薬科大出てはって、(#^.^#)・・今年34やて(--;)…

まぁ、アンタは歳の離れた男はんの方がエエかも知れんしなぁ~♪(*^^*)

それに、次男坊やさかい、親御さんの面倒見る心配もあらしまへん♪(^^)d

長男さんはもう7年前にお嫁さんも貰わはって、子供さんも2人いはるんやけど、

その次男坊が何時までも実家出ていかへんよってに、

長男夫婦は未だに梅田でマンション暮らしなんやて(--;)…

そやから、その次男坊がめでたく結婚と言う事になった曉には、

長男夫婦が実家に移って、アンタらがそのマンションに住まわはったらエエ言う事に

なってんねてぇ、アンタ~♪(*^^*)

ソイデナァ~、ソイデナァ~ソイデナァ~、ソイデナァ~ソイデナァ~、ソイデ

ナァ…………


    瑛子は受話器越しの母の声が、

   次第に遠ざかって行くように思えた…(T_T)…








次の土曜日、優一と瑛子は【喫茶・忘れな草】にいた。


「瑛子ちゃん、今日は何処行く?(*^^*)

宇治の方は行ったことある?あそこも紅葉きれいやで♪(^^)d

天ヶ瀬ダム見て、宇治川ラインで南郷まで行っても良いし♪(^_-)☆」


『…優一君…あんなぁ、…(+_+)…』

「アレ?瑛子ちゃん、どうしたん?(^_^;)今日は元気無いけど…」

『私、明日…(._.)…』

「明日?…瑛子ちゃん、明日何かあるの?」

『明日…うううん、何でもない(^_^;)…

ただ、大阪の実家に親戚の叔父さんが来はるんで、

今晩どうしても帰らなアカンねん…(+_+)…』


瑛子は優一に言い出せないでいた。

日曜日、大阪のホテルで見合いする事を…



「なんや、今日、帰るんか…(;_;)…」

『優一君、ゴメンな?(+_+)』

「ああ、かまへんよ(((^_^;)瑛子ちゃん、あんまり実家帰ってへんもんな^^;…

たまには顔出さんとアカンしなぁ♪」

優一は精一杯やせ我慢した。

瑛子は瑛子で、曖昧に微笑むしか無かった。


これ以上一緒に居ると、泣き出しそうだった…


『そいでなぁ、このまま大阪に帰ろ思て、用意して来たん(^_^;)』


   瑛子はそう言って、小さな旅行鞄を見せた…

     





『瑛子ちゃん、見てみ~♪綺麗な振り袖~♪(^0_0^)

アンタ、年が明けたら【成人式】やろ~♪

そやから、お母ちゃん張り込んだんぇ~♪

まさか成人式の前にお見合いの衣装になるとは思わなんだけど♪(^_-)』


瑛子の実家の居間の衣こう掛けには、母が用意した

赤紫色の生地に淡い藤の花房を描いた見事な振り袖が

掛けられていた。


『どないしたん?瑛子、嬉しないんか?柄が気に入らへん

のんか?お見合いの話が急やっさかいなぁ、アンタと一緒

に撰べたら良かったんやけど…』

振り袖の柄が気に入らなかったのではない…

むしろ、この母は自分の好みを知り抜いている…

自分が一緒に撰んでも、この振り袖に決めていたに

違いない…


けれども…


母に自分の全てを見抜かれているようで、素直に喜べない

のだ…

瑛子は未だかつて味わったことの無い、僅にザラついた気

持ちになったが…

『…うううん、お母ちゃん、凄い綺麗やわ♪ありがとう♪(*^^*)』

『そうか?ホンマに?(*^^*)良かったぁ~♪アンタはホンマに

エエ子やなぁ~♪(^0_0^)』


母を前にすると【良い子】を演じてしまう瑛子…

幼い頃から苦労する母親の姿を見て育った瑛子は、

嫌と言うことが昔から出来なかった。








「いやァ~ホンマに綺麗なお譲さんやこと♪(^0_0^)

写真で見るよりずっと綺麗やわ~♪(*^^)v

お母さん、ご自慢の娘さんですわねぇ~♪(^。^)y-」

「いや、もうそんなこと無いんですのよ~♪(*^。^*)

花嫁修業らしいモノ、何もさせておりませんの^^;・・

ホンマにお恥ずかしいですわ♪オホホホ♪(*^^)」

「そらまだ若いですもん、無理ないですわ~♪(^。^)y-.

瑛子さん、ご趣味は『社交ダンス』ですってね♪

まあ~今時の娘さんらしくてハイカラやわ~♪

ねえ、太郎ちゃん♪(^0_0^)」

「うん、ママ♪(*^^)」


先ほどから喋っているのは二人の母親ばかりで、

当の本人たちはただその場で俯いて座っていた。

こうして時折太郎が母親の言葉に「相槌を打つ」のが

精々だった・・

瑛子は早くこの場から逃れたいと云う思いが強かった・・



「まあ、若いものは若いもの同士、こちらのお庭でも