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古都・純情物語2(5~10章)

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第5章
11月中旬

 瑛子達に日常が戻って来た。

瑛子達二回生以上は、講義のほかに臨床実習がある。

短大に隣接する【京都市立京みやこ病院】で

彼女たちの臨床実習は行われる。

正規の看護婦に交じり、検温・採血の他、

入浴できない患者の身体を拭いたり、排泄物を処理したり、

現場の仕事を体で覚えた。


瑛子は『コレが現場の仕事』だと思えば、どんな作業も

苦にならなかった。

学生の中には『汚れた仕事』を嫌う者もいたが、

幼い頃から母の背中を見て育った瑛子は、

今は何でも経験することが、『良い看護婦』になるために

必要なのだと素直に思えた。


そんな日常の中で、一日があっと云う間に過ぎて行った。

授業・実習が終わっても、部屋に居る時は常に勉強した。

そんな瑛子を同級生はおろか、下級生までもが「ガリ勉」

と陰口を叩いたが、

瑛子は気にすることは無かった。

それに比べ・・・

ルームメートの泰子はこまめに、三人いるボーイフレンド達

と、日替わりでデートしていた。

時には門限が過ぎ、寮長に内緒で裏口を、

瑛子に開けて貰うのもしばしばだった。

今夜も門限を二時間近く過ぎた頃に帰って来た。

今夜は立命館の彼氏と映画を観て来た。


「ああ~~、面白かった~♪(^_-)-☆

 瑛子ちゃんも観て来~【ポセイドンアドベンチャー】

 良かったよォ~♪(*^。^*)

 ああ、スカラ座の前で、林君に会ったわ(-。-)y-゜゜゜」


  泰子の口から、懐かしい人の名前が出た♪

 
「ああ、そう言えばスカラ座の前で林君に会ったわ♪」

泰子は言った。

「え?林君も映画来はったん?(#^.^#)」

「(-。-)y-゜゜゜うううん、ウチらが映画館から出てきたら、

表でバッタリ。  バンド練習のかえりやて(^。^)y-.。o○

今度、京都会館でコンサートするんやて♪」

「え!あの岡崎公園の?凄い!(@_@;)」

「ちゃうちゃう、『別館』やで、別館(-。-)y-゜゜゜

 300席位は入れるらしいけど・・

 ほら、瑛子ちゃんにも前、言うたやろ?山木君のこと?

 今年の夏に海で死んだ『山木昭次』って子、

 あの子の『追悼コンサート』やんねんて。

 それで、早速チケット、買わされたわいさ(-_-メ)・・

 ま、お金は彼に出して貰ったけど♪(^_-)-☆

 でな、この前学祭盛り上げてもらったしな、

 ここでも行きたい人居るんやないかなと思って、

 10枚預かって来たんやけど、

 瑛子ちゃん、いかへん?」

 
 「(#^.^#)うん♪イクイク♪」

 
 「ラッキ~イ♪(^_-)-☆こら幸先ええなぁ~♪(^v^)

  中野さんも行きたいやろし♪あ、初子ちゃんにも言う

  たろ~♪^m^」

 
 「大井さん、私も協力するわ♪(#^.^#)」

 「ホンマに~ィ?おおきに~い♪(*^^)v

  そんなんやったら、あと10枚貰っとくやったわ・・

  ああ、足らんかったらナンボでも届ける言うてたけどな。

  ああ、同志社にりっちゃん(立命館)に府立医大に

  それぞれ5枚ずつ買わせて・・アアデモナイ、コウデモナイ・・」



  ♪(#^.^#)チケット→逢える♪→コンサート♪→逢える♪

       (^_-)-☆


   瑛子には、泰子の後の話は

   もう耳に入らなかった♪





第6章

優一の親友【山木昭次】は今年の夏、

 日本海の海で死んだ・・・

 一浪して、今年の春、『浪速商業大学』に入学した

 ばかりだった・・


 アルバイト先である、【不二家・三条店】で

 その一報を受けた優一は、

 ただ、唖然とするだけだった。

 何とか気を取り直し、店のマネージャーに

 事情を説明し、山木の自宅に向かった。


 案の定、山木の家族は誰もおらず、留守番を任された

 近所の主婦が、

「みんなで、舞鶴まで『お迎え』に行ったはる・・」と云った。


 それでも優一は信じられなかった・・

(あんな元気な山木が・・・死ぬやなんて・・)




 山木昭次。

 優一達とは京南高校で親しくなり、大林武・有田俊夫の

 四人で、『ザ・カミカゼ』と云うバンドを結成した。


 その名の由来は、四人で行った、

【京都丸山公園野外音楽堂】で行われた

 ロックコンサートだった。


 そのコンサートのメインは

 ジョー中山率いる【フラワートラベリングバンド】だ

 
 (ジョー中山はこの後、角川映画の「人間の証明」の

 挿入歌を歌い、一世を風靡するも、更に後、

 麻薬不法所持で逮捕された。)


 折しも、彼らの演奏の途中に、夕立ちになった!

 それでも優一達4人を含む野外音楽堂の聴衆は、

 かえって勢いを増加する雨となって

 ずぶ濡れになって熱狂した!


 その時に演奏された曲に【カミカゼ】があった。


 コンサートの帰り道、誰ともなくバンドの名前を

 【カミカゼ】にしようと言った。



 余り、深い考えはなかった・・(+_+)・・・

 昭次が死んだ時優一は、一緒に海に行った

 田川友宏を恨んだ。


(どうせ『酒好き』の田川と山木や、酒の入った状態で、
 
 無茶して海に入ったんやろ・・それでなったら、
 
 背の立つ浅い場所で溺れる筈がない(ーー゛)・・

 僕が一緒やったら、絶対に死なせへんかったのに・・)

 

 その日の夜遅く、黒塗りの寝台車に乗って、

 昭次は帰って来た・・


 昭次の訃報を聞き、彼の自宅で迎えた同級生は

 20人を超えていた・・


 勿論、大林や有田もいた。


 昭次と一緒に海に行った田川も、

 先に帰って待っていた。


 優一はその時のことを殆ど覚えていない・・

 20人以上いた友人たちとも、会話した記憶がない・・

 悲しかったか?

 泣いたか?

 それも記憶がなかった・・



 瞬く間に通夜・告別式を終えた。



 昭次は呆気なく、


 斎場の煙となって


 天に昇って行った・・


 まだ19歳だった。






第7章


 半ドンの土曜日、女子寮の食堂で昼食を摂っていた

 瑛子に、あとから入って来た泰子が走り寄った。


 「あ!瑛子ちゃん、良かった~♪(*^^)v

 あんな、頼まれてくれへん?

 今日2時に、林君と会うことになってんねんけど、

 瑛子ちゃん、代わりに行ってくれへん?

 コンサートのチケット、もう20枚預かることにしたんよ♪

 けど、ウチ、今日リッちゃん(立命館大学)の彼と

 デートやったん忘れててん^^;・・

 代わりに行って~~♪(^_-)-☆」


 泰子は早口で一気にまくし立てた。


 瑛子にも3時から同志社大学での

 ダンスサークルへ、レッスンに行く予定がある・・


 しかし、『チケット、受け取るだけやし♪(^_-)-☆』と

 泰子に強引に頼まれ、承諾する他なかった。

 
 それに・・・

 2週間ぶりに優一と逢えることも、

 瑛子を承諾させた理由の一つかも知れない・・