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CROSS 第14話 『挨拶まわり』

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第2章 翻弄



 道の駅の近くにあった『博霊神社』という神社に向かった。入口
の鳥居のところでたくさんの観光客とすれ違った。鳥居の向こうに
祠があり、その近くでこの神社の巫女が掃き掃除をしていた。巫女
は赤と白の服を着て、頭に大きな赤いリボンをつけており、顔を下
に向けていた。
 少佐はその巫女が誰であるかがわかると、回れ右して帰ろうとし
た……。
「わざわざ冷やかしに来たの?」
巫女が箒を手に掃除しながら少佐に言った。顔は下を向いたままだ。
だが、少佐が来たことにさっきから気づいているようだった。
「……いいえ。まさか、ここに松谷の支援者の一人であるあなたが
 いるとは知らなかったので」
少佐はそう巫女に言うと、あきらめた様子で祠の賽銭箱に向かった。
「…………」
無言の巫女を尻目に、少佐はポケットから財布を取り出し、財布の
小銭を一枚、賽銭箱に放りこんだ。小銭は賽銭箱の中に向かってい
く。

   ビシィン!!!

 小銭が賽銭箱に入ろうとした瞬間、賽銭箱に電撃が走り、小銭が
すごい勢い跳ね返され、少佐の顔の真横を飛んでいった。飛んでい
った小銭は、巫女の足元で転がっていた。
「!?」
驚いた少佐は、賽銭箱からひょいと後ろに下がった。電撃を出す賽
銭箱なんて初めてなのだろう。
「……ありがたい御札の力よ! まぁ、私のオリジナルっていうわ
 けではないけど」
少佐の後ろで、巫女が満足気にそう言った。巫女は小銭を拾うと、
それを賽銭箱に投げ込んだ。小銭はチャリーンという音とともに、
賽銭箱の中に入っていった。
「あんたのような、私が敵だと思っている奴からの穢れた賽銭は跳
 ね返すようにしてあるの」
巫女はそう言うと、掃除を再開した。
「…………」

 少佐は頭に手をやり、
「なんで、あなたは松谷を支持したんですか?」
巫女は手を止め、少佐を見た。
「……あの人はあんたと違って、変な思想に染まっていない人だか
 ら」
「変な思想?」
「ネオリベラリズムとか自由至上主義とかリバタリアニズムよ」
「……全部同じような気がしますが」
「とにかく。あの人はそういう思想の持ち主じゃないから」
「ただの古い人間じゃないですか。新しい考えを持っていないと、
 これから生き残っていけませんよ」
「……私は、外の世界との積極的な交流なんてしたくないのよ。こ
 の世界に混乱を生じさせるだけだから」
「でも、オレたち外の世界の住民が訪れた始めた結果、この世界は
 発展しているそうじゃありませんか。そのさい銭の金額も増えたん
 でしょう」
「経済発展すればいいもんじゃないわ!!!」
巫女は少佐を睨んで言った。少佐は何言っても無駄だという顔つき
をして、
「それじゃあ、そのお考えでこれからも頑張ってください。これで
 失礼します、博霊霊夢さん」
少佐はそう言うと、博霊神社を後にした。霊夢は口を開いて何かを
言おうとしたが、少佐に聞く気が無いことがわかると、掃き掃除を
再開した。霊夢の掃き掃除の音が後ろから聞こえてきたが、遠ざか
るにつれて聞こえなくなっていった……。