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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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らくがき

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雪の夜を想う



日を追うごとに空気の冷たさが
塗り重ねたように嵩を増やしてくると
雪の夜を僕は想う

降り積った雪が街を覆う
街頭に照らされた景色は
単純な白と黒だけの世界

家族の寝静まった頃
僕は灯りを消した窓を開け放つ
暖かさを残していた二階の居間に
重く冷たい空気が流れ込む

歩く人はいない
自動車もうごかず
まばらに灯る窓にも動く影はない
雪が音を吸い取るから
夜は一層静寂を深める
僕は意識までが白黒写真の世界に取り込まれる

動いているのは星の瞬き
消えてゆく白い息
呼吸の音が大きさを増してゆく
送電線の雪がときおり
重さに耐えかねて落ちる

僕はモノクロームの世界から引き戻される
顔や手足の冷たさに驚いて
そっと窓を閉める

そして
まだ少しだけ温もりを残した寝床に
身体を硬くしてもぐり込む

そんな雪の夜を想う


<雪の夜を想う> 2011.12.28

作品名:らくがき 作家名:郷田三郎(G3)