らくがき
雪の夜を想う
日を追うごとに空気の冷たさが
塗り重ねたように嵩を増やしてくると
雪の夜を僕は想う
降り積った雪が街を覆う
街頭に照らされた景色は
単純な白と黒だけの世界
家族の寝静まった頃
僕は灯りを消した窓を開け放つ
暖かさを残していた二階の居間に
重く冷たい空気が流れ込む
歩く人はいない
自動車もうごかず
まばらに灯る窓にも動く影はない
雪が音を吸い取るから
夜は一層静寂を深める
僕は意識までが白黒写真の世界に取り込まれる
動いているのは星の瞬き
消えてゆく白い息
呼吸の音が大きさを増してゆく
送電線の雪がときおり
重さに耐えかねて落ちる
僕はモノクロームの世界から引き戻される
顔や手足の冷たさに驚いて
そっと窓を閉める
そして
まだ少しだけ温もりを残した寝床に
身体を硬くしてもぐり込む
そんな雪の夜を想う
<雪の夜を想う> 2011.12.28