らくがき
詩と小説
詩人は正直者だ
バカと言ってもいい
自分の経験したことを
自分の思ったことを
自分だけの感じたことを
自分の言葉で
自分だけの鍛え上げた言葉で
素直に
正直に
包み込むほど愚鈍に
切り刻むほど鋭利に
恥ずかしいほどに
神々しいほどに
バカ正直に叩きつけてくれ
微塵の翳りもない
正直な貴方を
だから僕を騙さないで欲しい
小説家は嘘つきだ
虚虚実実の実だって
実は虚の上の構造物に過ぎない
誰かの経験したことを
誰も経験していないことを
あたかもそれを見て来たかのように
まるでそれに触れたかのように
幾百人が行進し
それぞれが勝手に喋りだし
俺は知らないと嘘をつき
嘘を暴くと誰かが言う
閉じた思考の中で
無限の宇宙を拡げつつ
しれっと僕に見せてくれ
微塵の曇りもない
見事なまでの虚構を
だから僕を信じさせて欲しい
<詩と小説>10.08.09