【第七回・伍】ごー・あ・(田)うぇい
「最ッ低!! 沈んじゃえ馬鹿ッ!」
真っ赤な顔をしたヨシコがガスガスと中島の頭を踏む
「ヨシコちゃん! ストップストップ!!; 死ぬって!! 中島死ぬ!!;」
南と坂田、京助が必死にヨシコの足を抑えてヨシコを宥める
「コラコラヨシコ;恩人になにしちょん;」
苦笑いで阿修羅がやってきてヨシコに言った
「…生きてるか~中島~;」
春の冷たい雪解け水で出来た小川の中に浮かぶ中島に向かって京助が声をかける
「…まぁ…生きてはいます…」
中島がヒラヒラ手を振った
「よ…よかったじゃん;背中綺麗になってるぞ?;」
坂田が手を差し伸べて中島を引っ張りあげようとする
「いや~; 散々だなでっかいの」
阿修羅も坂田を手伝い中島を引っ張り上げた
「ホラ! ヨシコ! お礼とスンマセンは?」
阿修羅がヨシコに向かって言う
「ありがとうは言うわ!! でも謝らないんだから!! そうよ! 絶対謝ってなんかやらないわ!!」
眉を吊り上げてヨシコが怒鳴る
「んな…ヨシコ…お前が重いのはじじ…」
バキッ
阿修羅が言い終わる前に坂田の顔面スレスレを紺色の二本の足が風を切って飛び阿修羅の顔面に見事なまでの両足キックをお見舞いしていた
「…乱暴な女ー…」
中島がボソッと言うとヨシコがキッと中島を睨んだ
「何よ! 何よ何なのよッ!! 乱暴で悪かったわねッ!!」
ヨシコがズカズカと大股で歩き中島に近づく
「別に誰も悪いとか言ってねぇだろ;」
タオルを首にかけた中島がヨシコに言い返す
「私にはそう聞こえたわ!! うん! そう! 聞こえたんだもの!!」
背の高い中島を上目で睨む形でヨシコが再度怒鳴る
「いちいちそんな大声出さなくてもいいじゃん! やかましい…」
さっきより少し大きな声になった中島がソレに言い返す
「怒鳴らせてるのはあなたじゃない!! そう! あなたが悪いんでしょ!?」
さらにヨシコが怒鳴ると中島がむっとした顔になった
「なんかスッゲームカツク」
中島が言う
「何よ! 私だってムカついてるわ!! うん! そう!! すごく嫌なヤツじゃない?!」
ヨシコが中島を睨みながら言った
「ハイハイハイハイ~…」
阿修羅がパンパンと手を叩いて二人の間に割ってはいる
「復活早ぇえなぁ;」
さっきヨシコの見た目にも相当威力のありそうな両足キックを喰らったばかりの阿修羅を見て南がつぶやく
「でっかいのもヨシコもまぁ座る座る」
阿修羅が二人の肩をつかんで押しなが座ると御互いを睨みあったままで中島とヨシコも座った
「竜のボンとメガネと…ちっこいのもコッチコッチ」
阿修羅が京助たちを手招きする
「お前はちっこいのだそうだぞ南」
坂田が南の肩を叩いて阿修羅のほうに歩き出した
「…傷つくなぁ; まだこれから成長期なのに…たぶん」
南が苦笑いで坂田の後に続くと京助もソレについていく
「まぁ…こんないい天気の下喧嘩すんのもいいけど」
「いいんかい;」
阿修羅の言葉に坂田と京助が同時に両方から突っ込んだ
「もっと気分良くなることしようや」
バンバンとヨシコと中島の背中を叩くと阿修羅が二人の間にハニワを置いた
「…俺のやったハニワじゃん」
中島が置かれたハニワを手に取った
「返せいっても返さなんだぞー?」
阿修羅が笑いながら言う
「言わねぇよ;」
中島がハニワを置いて溜息をついた
「ヨシコ…いい加減睨むのやめんさ;」
阿修羅が中島を睨んだまま顔つきを変えないヨシコに言う
「無理よ無理無理…だって私ムカついてるもの」
中島を睨んだままヨシコが阿修羅に言った
「ガキ」
中島がヘッと挑発的な笑いを浮かべながらヨシコに言う
「お前は…;」
そんな中島の頭を坂田がぺシッと叩いた
「まぁヨシコはまだ子供っちゃー子供だけどもさ」
阿修羅がヨシコを見て言う
「な…私のどこが子供なのよッ!!」
ヨシコが阿修羅に向かって怒鳴った
「そんなとこ」
阿修羅がヨシコの頭を小突いた
作品名:【第七回・伍】ごー・あ・(田)うぇい 作家名:島原あゆむ