最初で最後の恋(永遠の楽園、前編)
裏切り者は、東野じゃない。
私だ..私だったんだ。
弘さんを信じきれず、裏切った、私だったんだ。
一番、憎むべき、裏切り者のユダは、ああ..私..私
心は、闇に、さらわれたまま,身体中の、生気がうせ、ぬけがらになっていく。
谷川岳は、漆黒の、闇の中にあった。
私は、ヘルメットのライトを、点ける。
月も星もない、闇の中、動物の目が、ぎらりと光り、また、闇に溶けていった。
絶望の中、一の倉沢の、あの場所に向かう。
-----------------------(p.63)-----------------------
やっと、ここに着いた、あなたが死んだ場所。
あなたは、この岩場から落とされ、行方不明になった。私を残したまま突然、消えてしまった。
私は、一の倉沢の岩場を、岩壁にしがみつき、鎖につかまりながら縦走している。
あなたに逢うためにあなたと同じ場所で死ぬために・・
きっと、あなたは私を迎えてはくれない、それはわかっている。
あんな男に抱かれてしまった、あなたを殺した仇に私は抱かれてしまった。
あいつを殺して今、私はここにいる。あなたはゆるしてくれるはずもない。
でも私はあなたのそばで死にたい。どうしても、あなたのそばに行きたい、ゆるしてくれなくてもいいんだ。
一の倉沢は相変わらず、濃い銀色の霧のカーテンで、谷間のあなたと私の間に、厚い結界を作っている。
やがて銀色のカーテンは金色に変わった。夜明けだ。
谷間からの、竜の天上りの様な強烈な谷風が、急にやんだ。
金色のカーテンに穴が開き、谷間からの、一筋の冷たい風が私の頬をなでる。
ああ、あなた、あなたなの? 汚れた私をゆるしてくれないの、でも私はあなたのそばにいきたい、
いやだといわれても、私はあなたのそばにいきたい。
わたしは涙で霞む目を、あなたがいる谷間にむけた。
金色のカーテンを縫って、あなたの吐息のような風がまた、私の頬をなでる。
-----------------------(p.64)-----------------------
私はあなたのいる、谷底に向かって飛んだ。
霧のカーテンの中に、入った..
..桃の香りがする。
私はゆっくり、目を開けた。
花々が咲いて、やわらかい日差しの中、鳥達が唄っている。
ここは、何処だろう.
私は、私は..そうだ、飛び込んだんだ。
..弘さん、弘さんはどこ..
私の胸から、なにか、飛び出している、
骨だ。
人の骨が私の、背中から胸へ、刺さり、突き抜けている。
不思議と、痛いどころか、気持ちがいい、ふわりと愛する人に、抱かれているようだ。
顔の横になにかある、骸骨だ、人の骸骨..
..弘さんだ、弘さん、弘さん。
ここは、弘さんの、落ちた場所..
ここは、誰も、見つけられない。
ここは、ここは、楽園なんだ。神も邪魔することはできない、楽園。
私はもう、弘さんと永遠に一緒なんだ。
ああ、ありがとう、弘さん
私をゆるしてくれるんですね。。
私を楽園でずっと、抱いていてくれるんですね。
もう、ここで、ずっと、一緒なんですね。
やがて、私も骨になり、二人は、永遠に、透明なまま、溶け合う。
永久に..永遠に。
-----------------------(p.65)-----------------------
最初で最後の恋(永遠の楽園)
完
あとがき
最後まで、読んでくださった、皆さん、どうもありがとうございます。
久々に 筆を握り、最後まで、書けるか、心配でしたが、皆さんにささえられ、どうにか、最後まで
書く事ができ、感謝、感激です。
感想、意見など、聞かせていただけると、幸いです。
次の作品にいかさせて、いただきます。
シリアスな内容で、少し、疲れました。
少し、五行詩なんぞ、きままに書いて、気持ちを、遊ばせようとおもいます。
よろしかったら、お目汚しください。
ファン登録していただいた方々、どうもありがとうございました。
大変、はげみになります。
次回作の小説発表と同時に、連絡させていただきます。
暑い日が続きますが、皆様は体調など、崩されませんように。
2011.7.10
ここも
-----------------------(p.66)-----------------------
====================================================
作品名:最初で最後の恋(永遠の楽園、前編) 作家名:ここも