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佳品雑感(1000文字随筆)

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(0101) クロスオーバーイレブン



▼今年もクロスオーバーイレブンの季節がやってきた。年二回、盆と正月のスペシャルプログラムで、心にわだかまっているしこりを取り除き、気候的に辛い時期を乗り越える活力をくれる番組と、わたしのなかで位置づけている。一九九〇年代には毎日のように聴いていたこの放送も、いまでは年に一〇回しか放送されない超レアな放送になってしまったけど、この放送を楽しみにしている聴取者の数はかなりのものではないかと想像する▼この番組の魅力は全部で三つ。DJの声、スクリプト(=脚本)、そして選曲。DJはケビン・コスナー、ロバート・デニーロ、リチャード・ギア、ブルース・リーなどの映画の声をあてている津嘉山正種さんで、その実力は不動のものがある。そして、スクリプトは毎回練られた幅広い分野にわたる物語、小咄、企画物で、上質の小説やエッセイを読んでいる気分にさせてくれる。選曲は洋楽のロックやポップスを中心に、新旧織り交ぜての放送でとても魅力的である。この三つを柱として放送されるこのクロスオーバーイレブンは〈現代の至宝〉と云っても良いだろう▼と、この放送がわたしにとってとても貴重な放送になったのはなぜか。それはラジオを聴きはじめた中学のときに同NHK-FMのミュージックスクエアから、青春アドベンチャーへとつながる夜の放送を梯子していて、その終着点としてあったのが、クロスオーバーイレブンなのである。二十三時という、これまでに経験したことのない時間帯にラジオを聴いているというシチュエーションが、自分にとってかけがえのない贅沢な時間であるように思え、もうあと一時間で日にちが替わってしまうと云うことにロマンすら覚えるようになって、気が付いたら、平日の夜はクロスオーバーイレブンという図式が出来上がっていた▼大人の世界を垣間見た面白さとでもいうべきか。大人の世界と云うと、思春期のころは、すぐにエロとか、そちらの方面に意識が向かいがちであるが、わたしにとって大人と云うのはもう少し崇高なものという想像が頭の中にあって、その意識はいまも変わっておらず、もう大人以外の何者でもない年代になってしまった現在の自分を見ても、やはりまだ、仕事にやりがいをもってあたるとか、上質なバーで杯を傾けるとか、そういうものと同列に、夜の一人の時間を有って、心地いい音楽番組に耳を傾けると云うシーンがランクインしているのである。大人はいいものですよ。

(2011.08.11)