こんばんは ④<クリスマスの種>
あれからまた夏が来ました。
こうちゃんは六年生になっています。
あのオルゴール?
まだちゃんと有りますよ。箱の上に居る小さなトナカイに触るとネジも巻かないのに
「パンポロリン」ときれいなメロディーを奏でてくれます。
そうすると、それに答える様に、妹のベッドの上の方から微かに、こうちゃんのオルゴールと似た様な音色が聞えてくるのです。
もちろん、妹のそれはこうちゃんには見えません。
でも、妹にはちゃんと聞えて、はっきり見えているのでしょう。
妹はあの夜、こうちゃんにも見えた、天井に吊り下げられたオルゴールメリーの辺りを見上げて、機嫌良く笑っているのですから――。
おわり
02.11.30
№010
作品名:こんばんは ④<クリスマスの種> 作家名:郷田三郎(G3)