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機械修理人 壱と半分-親月-

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ゆらりみえたしろいひかり。
ぼくをてらしたしろいひかり。
とおくにあるせかいといまぼくのせかいをつなぐちから。
いまもすこしだけしか、りかいできない。
それでも、たぶんぼくは、まだつみのなかでこきゅうしつづけてる。


[ 四 ]

結局真夏日は、連続三十五日間で終わり、熱帯夜も三十四日間で終了した。修理人が怪我をして、五日目の事だった。カレンダーに恨みを込めたバツをつけていた少年も、終わりを聴いた瞬間飛び上がって喜んでいた。暑さで溶けきった修理人も泣きたい位、嬉しかったのだ。

「気温も下がったし、夜も少しは過ごしやすくなるし!良かったね、これで少しは楽になるよね!!」
「…ん、あぁ…そうだな…」

修理人のうきうきした声に、少年は嬉しさを感じさせない声で答える。どうしたの?、と修理人が聴いた瞬間、ぎろりと睨む二つの瞳が向けられた。

「どうもこうもないだろ!何で、氷零庫に入れてあったものが全部なくなってるんだよ!!」
「え…そ、それは…」

視線を泳がせて誤魔化す修理人の姿が、少年の怒りの炎に油を注いだ。

「まぁさかぁ、俺が休んでいる間に全部食べたとかぁ、そう言う事はないよねぇ?」
「あ、いや、え、えっとぉ…」

次の言葉を濁して、にへ、と情けない笑顔を少年に向ける。正確に言えば、全部食べた、と言うより料理に失敗して捨てたり、食べられないと判断したものを捨てただけなのだ。如何に貧相なものしか残っていなかったか。
少年からすれば、そう言う状況でやりくりしている自分を誰かに褒めて貰いたいとも考える程だ。
彼も修理人のそれに合わせて、にこり微笑むが、勿論ごまかす事は出来なかった。

「今から街に行って仕事とって来ーい!!一つでも取れない限りかえってこなくて良いからな!!」
「え!?今日も暑いよ?」
「関係ないだろ、行って来い、絶対行って来い、今直ぐ行って来い!」

街へ出かけるための鞄を投げつけるようにして持たせる。ゴメンナサイを連呼して何とか許して貰おうとする修理人に対し、笑顔でこう釘を刺した。

「当然、街までは省エネ、節約の為におじさんから貰った自転車で行くんだよな?許して欲しいんだろ?」
「う、うぅぅぅ…」
「三十路にもなった男が泣いたって駄目だからな!!気持ち悪い!!」
「あ、酷いなっ、僕はまだまだ若いんだぞ!」
「ぐだぐだ行ってないで、行って来い!!」

部屋から蹴り飛ばして、外に少年は送り出した。窓から、ぶつぶつ文句を言いながら修理人の倉庫に自転車を取りに行く姿が見られる。ふと視線が自然と彼の手に行く。強く問題はない、とヨーナムの診断ではそう下っていた。実際、傷跡は未だ消えないが、無理をしなければ日常生活に支障はない。
未だ仕事上支障がないか分からないが、働いて貰わなければ困る。一部の村人の優しさばかりには甘えてられない。手は心配だが、仕方がないのだ、と自身に言い聞かせる。

「さて、俺は…」

布製の鞄から、厚い本を取り出してにらめっこを始めた。今度こそ修理人が怪我をした時に役に立てるように、と知識を蓄える為の勉強をしようと考えていたのだ。
治療をただでしてくれたヨーナムに対しては、炊事洗濯で返している。彼の持っている蔵書から、学べるものは学ぼうと思い、借りてきたのだ。

「む、難しい…」

一ページ目、二行と半分で既にギブアップ寸前になっている少年がそこにいた。
青い空に、鐘の音が響く。キラキラ輝く光が緑を明るく照らし、色を飛ばしそうな勢いだった。そんな夏の日。彼らは、それぞれの時間を、それぞれの過ごし方で時間を未来へつなげて行った。