雪の宿命を乗せて
『雪の宿命を乗せて』
雪国の小さな田舎町、そこには一本の鉄道が通っている。
それは南からやってきて、北の雪山へと延びていく。
そんな雪国の小さな町に、今年も初雪が降り出した。
雪混じりの木枯らしが吹き、外は寒い。
それでも悠馬(ゆうま)は、幼い妹、美雪(みゆき)の手を引いて、町外れの鉄橋までやってきた。
「お兄ちゃん、列車がやってくるの?」
「うん、もう直ぐくるよ」
「それに、お母さんが乗ってるの?」
美雪は小さな手で、悠馬の手をしっかり握り締めている。
しかし、冷たい。
悠馬は美雪の指先を手の平で包み込み、ふーふーと息をかけて暖めてやる。
「お母さんが、きっと何か良いプレゼントを、美雪に放ってくれるよ」
悠馬は、今にも泣き出しそうな妹にそう言って宥(なだ)めた。
父親が今朝悠馬に話してくれた。
「悠馬、今日、お母さんが列車に乗って通っていくから、去年のように、鉄橋を渡る時にプレゼントを投げてくれると思うよ。だから美雪を連れて行ってきなさい」
初雪の降る中、二人は父親の言う通り、その鉄橋のそばまで出かけてきた。そして今、夕暮れ時に走ってくる列車を、川原の堤に立って待っている。
雪が二人に向かってどんどん降ってくる。
悠馬は、妹の小さな肩に積もった雪をぽんぽんと振り払ってやる。
「お兄ちゃん、寒いよ」
美雪は今にも泣き出しそう。
「もうちょっとだから、辛抱するんだよ」
悠馬はそう優しく美雪に囁き、しっかりと抱き締めてやった。