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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・四】うさもさ

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シャクシャクという音が昼下がりの縁側から途切れ途切れに聞こえてくる栄野家の日曜
「次オレ~!!」
なんとも触り心地のよさそうな坊主刈りの少年がスティック状の人参を高らかに掲げた
「じゃあこうちゃんの次は麻衣ね? いでしょ? ね? ね?」
黄色いスカートをヒラヒラさせた麻衣がこうちゃんと呼んだ少年の肩を掴んで揺すった
「クロ~ク~ロクロ~」
こうちゃんが人参をクロ (ホクロ)の前でチラつかるとクロ (ホクロ)が鼻をヒクヒクさせて目をあける
「可愛い~!!」
ソレを見て麻衣が言った
「でしょ? でしょ?」
悠助が笑いながら言う
「ねぇタカちゃん!! オレにも抱かして?」
こうちゃんが制多迦を見上げて聞くとヘラリ笑顔で制多迦が頷いた
「ああん! ずるい!! 麻衣も~!!」

「…大盛況だな」
「おかげさまで」
部屋まで聞こえてくる縁側の賑わいに京助がヘッと口の端を上げた
「で? 結局飼うことになったんか?」
南が椅子をギーギー鳴らしながら聞いた
「まぁ…一応な; …飼い主見つかるまでって条件付で」
京助がかりんとうを齧りながら言う
「最終手段学校って手もあったんだけどな」
中島がテレビ画面から目を離さずに言う
「一匹だけってかわいそうじゃ~ん」
南が笑いながら言った
「そうだよなぁ…一人って寂しいよなァ…だからバイキンマンもグレたんだよなぁ…」
坂田がコントローラーの○ボタンを連打しながら言う
「ってかアンパンマンの体って何で出来てるんだろな?」
ふと南が言うと中島と坂田の手が止まった
「…何って…」
京助が口を開いた
「…何だろな」
そして真剣に考え込む3馬鹿と京助
「…愛と勇気しか友達いないって言ってるけど話しの中に愛ってのも勇気ってのも名前でてきてねぇしな…空想の友達か?」
中島が言う
「…なんかそう言うと…アンパンマンってやたら怪しい正義の味方になるナァ;」
南が苦笑いで言った
「奥が深いな…アンパンマン」
坂田が言うと京助と中島、南が頷いた

「…クロ取られたの?」
微かな風を感じて制多迦が横を見ると足を組み頬に手を置いた矜羯羅が隣に腰掛けてクロ(ホクロ)を触りあう悠助達を見ていた
「…んがら…いつ来たの?」
制多迦が少し驚いたように聞いた
「今」
それにさらっと答えた矜羯羅がゆっくりと制多迦の方を見た
「…だ怒ってる?」
制多迦(せいたか)がボソッと聞くと矜羯羅が立ち上がった
「…もうその願いは叶わないんだからね」
腕を組み制多迦に背中を向けた矜羯羅が言う
「…ん」
制多迦が頷く
「…つの願い事…しても大丈夫かな」
制多迦が花弁の入った板を取り出して太陽に透かして見る
「…いいんじゃない? 一つ目は叶わないんだし」
矜羯羅が背中を向けたまま答える
「…うだね」
ヘラッと笑った制多迦が立ち上がった
「…めん…矜羯羅」
ボソッと謝って矜羯羅の背中に制多迦が頭をつけた
「…運命って変えられると思う?」
矜羯羅が俯いて制多迦に聞いた
「…制多迦…僕は生きたい…」
小さく矜羯羅が言う
「…ん」
それに対し制多迦が目をとじて返事をする
「僕は生きてるんだよ」
さっきよりは大きな声で矜羯羅が言う
「…ん知ってる…だってあったかいもん矜羯羅は生きてる」
目を閉じたままで微笑んで制多迦が言うと制多迦の頭から矜羯羅の背中が離れた
「…生きたいって願ってもいいんだよね」
そう言った矜羯羅の手には花弁の入った板
「…ん」
微笑んで制多迦が頷く
「…ありがとう」
振り向いた矜羯羅が笑顔で言った