囚人惑星
鳥は小首を垂れて、黒い石を見た。ざらざらしているのかべたべたしているのかよくわからない見た目に、俺は嫌な気持ちになった。今の今まで、これをこいつは食っていたのだ。悪寒がしてくる。
「人間が鳥になるなんて……俺は人間だ」
「だから、食事があっただろ、お前専用の」
「あ!」
「あれを食べ続けると、この黒い石しかそのうち受け付けなくなるのだ。そして、体は鳥になる。そして……ああ、時間の…ようだ。俺が許される…時間が…来た」
「お、お前、1003号!」
その鳥の体が変化していた。羽毛が消えていた。目の光が硬質に煌いた。伸ばしかけた翼が、堅い光を纏っていた。1003号の鳥はきらきらと光る結晶の体に変わっていたのだ。そうか、鳥があの結晶石の正体だったのだ。自ら黒い毒の石を食べ、自らの体で無毒化する。そして罪を許されて死んでいくのか。
俺はようやく自分の罪がわかった。わかった、だからといってどうする。俺も鳥になって、この石を食べて、結晶になって死んでいくとわかったからといって、救われるというのか。
俺は泣きたくなった。
だが、何もできない。
この惑星は囚人惑星なのだ。脱獄不可能な監獄惑星なのだ。
最後に一人、俺が終身刑になれば、そうではなくなるらしい。
俺は結晶になった1003号の体を思いっきり殴りつけた。それは、煌く結晶の欠片(かけら)になって、きらきらと舞い上がっていった。