キジと少年
少年の名は一条勇人〔いちじょう はやと〕、今年で八歳になる。
彼は、村で商売を営む両親のもとで何不自由なく暮らしていたが、つい最近、夜中に忍び込んだ強盗によってその両親を無残にも殺されてしまった。
強盗の侵入に気づいた両親の咄嗟の判断で、押入れに隠された彼だけが命を奪われることなく、この世に生き永らえることができたのだった。
しかし、押入れの戸の隙間から彼が見た両親が殺される時の様子は、幼い彼にとっては、消したくても消せない恐怖として記憶に張り付いてしまった。
「とうちゃん、かあちゃん!」
思わずそう叫びだしそうになるその口を、慌てて両手で塞いで少年は堪えた。
そしてその時、彼は両親を殺した犯人の顔をしっかりと目に焼き付けた。
名もなき小さな村でのこと。犯人は当然すぐに見つかってもいいはずだったが、あいにく夜中の出来事で目撃者がなく、捜査は難航した。
犯行を目撃したその少年は――。