キジと少年
彼女が帰ったあと、夜中にひそひそと芳恵と陣伍が話していた。たまたまトイレに起きた勇人にはその声が聞こえ、思わず立ち止まって耳をそばだてた。
「お前さん、どうしてよく調べなかったんだよ。あの子にそんな財産があったなんて……。もっと早くに分かっていたら……」
芳恵の歯がゆそうな声がした。
「そんなこと言ったって、今更どうしようもないだろうが。俺だって、あいつの両親があんなことになって、寺の坊主からいきなり遠縁なんだから面倒みてやってくれって言われて、急なことだったし、そんな財産のことまでは頭が回らないさ」
「それにしてもお前さん……。もうーっ!」
芳恵の歯きしりが聞こえてきそうだった。