世界へ
戻ってきてからすぐ、太郎はラーメン屋でバイトを始めた。太郎の父、純一は電気関係の仕事をしており、地位も上なので給料も良い。小林家は普通の家庭に比べ裕福なほうになるだろう。しかし、太郎は親のスネをかじるのも嫌だったので、バイトを始めたのだ。最初はやはり大変だったが、三ヶ月を過ぎる頃には大分慣れてきた。
「何事も経験だ。同学年の奴は毎日学校、俺は仕事。仕事もなかなか面白いが、やっぱ将来のことを考えると、学歴は必要かな?来年一年ダブりで地元の高校に行ってみるか」
新しい年になり、一月、麻美から連絡があった。
「もしもし」
「たろちん、なかなか麻美に連絡くれんよね。麻美のこと嫌いになった?麻美まだたろちんのこと好きなんよ。もう一回麻美と付き合って」
「俺は高校もやめて、魅力の魅の字もなくなった。俺より魅力的な人はいっぱいいるよ。麻美はそういう人と幸せになったほうがいい」
「けど、麻美、たろちんのことまだ忘れられんとよ」
「ごめんけど、もう麻美を付き合うことは出来ない。俺のことは忘れてくれ」
「わかった。。。」
太郎は電話を切った。あれだけ好きだった麻美もことがもうどうでもよくなっていた。男女の関係とは不思議な物である。付き合った頃、太郎は麻美に尽くした。麻美が太郎に逢いたいといえば、自転車で片道一時間ある距離、5分しか逢えなくても太郎は麻美の所へ行った。太郎は全力で麻美を愛した。麻美の為に高校までやめた。その結果が振られた。しかし、麻美と別れてから距離をおいた後、麻美が太郎のことをどんどん好きになっていった。もしかすると、女は追われるより、追うほうが好きなのかもしれない。太郎がこう簡単にも気持ちを切り替えられたのは、麻美を全力で愛したから、俺はやれることは全てやった!と、言う気持ちがあったからだ。だから麻美も別れてから気付く。愛されているときはそれが当たり前になり、気付かない。恋愛とはそういうものかもしれない。
さて一月、受験のシーズンだ。太郎は中学の時の一個下の受験生と一緒に受験をうけることになった。その中には、小学校の頃から、可愛がってきた、カズ坊がいる、カズ坊は中学の番長で、俗に言うヤンキーなのだが、なぜか太郎には兄の如く慕っていた。
「うわー。とうとう俺もカズ坊と一緒に受験かぁ」
「まぁ、たっちんが野球で高校にいった時から、こうなることはわかっちょったけどね」
「お前、言うのー」
そんな会話をしながら、同じ教室に入った。
問題用紙が配られた。太郎は受験勉強などしなかったので、チンプンカンプンだったが、この高校は受験すれば誰でも入学できる学校なので大丈夫だろう。
2月になり、結果がわかった。
<合格>
カズ坊も合格していた。
3月になり、公立のほうも受験した。こっちは少しレベルの高い学校だったので、落ちてしまった。ちなみに、カズ坊は受験学校で休み時間タバコがバレ、受験できなくなってしまった。
太郎とカズ坊は同じ私立の学校に行くことになった。