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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「不思議な夏」 第十章~第十二章

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「志野さん、立派じゃ!なかなか言えぬ事じゃぞ。貴雄さんは幸せじゃのう・・・なにやら祖父のような年長者のわしが教えられることばかりじゃ。恥ずかしくなるわい」
「先生、志野は厳しい時代を生きてきたからこそ身につけた心得なんでしょう。今では望む方が無理なことです。平和ボケしていますから、恥ずかしいですが・・・」

貴雄の台詞はもっともだと、千葉も美香も聞いていた。

食事が終わって、部屋でそれぞれに紅白を見て寛いでいた。貴雄の部屋に電話が鳴った。

「小百合です。お蕎麦のご用意をさせて頂きますので、ロビーに降りてきて頂けませんか?千葉先生ご夫婦とご一緒に?」
「解りました。お誘いして直ぐに参ります」

小百合は自分とそこに居る5人の分だけ蕎麦を用意した。他の客には夕食のときに蕎麦を出していた。貴雄たちに出さなかったのは、この時間を一緒に過ごしたかったからだ。温かい蕎麦が運ばれてきて、少し腹が空いて来た時間になっていたので美味しく戴けた。

「やっと女将も落ち着けるようになったようじゃな」
「はい、先生。お心遣いありがとうございます」
「毎年世話になっておるからのう・・・今年は格別じゃ。来年からはきっとこの顔ぶれで歳を越すのじゃろうな・・・楽しみが出来たわい」
「私もそうであって欲しいと願います。早く志野さんに子が出来てこの手で抱っこしたいと夢見ております」
「まだ少し先でございますよ・・・母様」
「そうかしら・・・貴雄さんに直ぐにとお願いせねばなりませんね」
「ええ?子供ですか・・・志野が望むようですから、来年はひょっとしたら、ひょっとしますよ」
「ほんと!ねえ、臨月になったらここに来て子供を生んで欲しいの・・・お世話したいから、貴雄さんお願いします」
「・・・小百合さん、それは志野も喜ぶでしょう。その時は私にも母さんと呼ばせて下さい」
「貴雄さん・・・ありがとう」

そうなったらみんなでお祝いをしようと千葉は提案した。ここに居る貴雄、志野、千葉夫婦、美香、小百合それぞれの劇的な出会いの一年がもう直ぐ終わろうとしていた。