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ブラウンの瞳とブルーの瞳

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 人生は360度、あらゆる方向から見ることも、また見回すこともできるのに――なのに、ぐるっと見渡したことなど一度もありませんでした。
 いつもいつも足元ばかりを見つめ、目の前のことにすら視線を背けておりました。

 本当ならそこに、もっといっぱい楽しいことも見えたはずなのに……。
 ブラウンの瞳に、敢えて何も映らないように過ごしてきていた彼女。

 そしていきなり飛び込んできた、そのブルーの瞳。
 ブラウンの瞳とブルーの瞳は一気に混ざり合い、溶け合ったようでした。
 互いを認め、互いの悲しみを掬い合い、その瞳の奥に次第に幸せが広がっていくのを感じたのです。

 その時になって初めて、彼女は生の喜びを知りました。そして彼も……。

 二人は互いの心の傷を舐めあい癒し合い、そして悲しみを喜びに変えていったのです。
 二人の視界には、これまでの暗い毎日の倍以上もの長さの幸せが、果てしないほどに広がっていたのです。
 明るい虹色に染まる二人の将来が……。
 そこにははっきり見えていたのです。

 それからの二人は常に手を携えて、迷うことなく前を見つめて歩いていったのでした。


               ――  おしまい ――