ブラウンの瞳とブルーの瞳
悲しい目をした一人の少女がおりました。
彼女はその悲しみを胸に秘めながら成長し、それはそれは美しい娘になりました。
しかし、その胸の底にある重いものをどうすることもできず、その瞳はいつも暗いブラウンに沈んでおりました。
そして、たまにはそこに、どうしようもないほどに潤いが満ちてきて、止めどなく溢れ出ることもありました。
けれどそんな時は、必ず人目に触れない場所へ行くのです。
月夜の海。
明け方の浜辺。
静かな湖畔。
夕暮れの丘。
星空の下の公園。
そして、誰も知らない秘密の場所へ。
そこで思いっ切り泣いたなら、次の日からはまた、誰にも見えないように悲しみを押し隠し、そうっと静かに生きるのです。
そんな彼女にも、ある年のある日、突然春が訪れたのです。
その瞳と出会った瞬間、心の重石が突然消えたような気がしました。
それはふわっと空へと消えて行き、代わりに軽やかな何かを運んできたのです。
彼女の、深い悲しみを湛えたブラウンの瞳を見つめる、その青空のように澄み切ったブルーの瞳。
ブルーの瞳の彼も、彼女と同じ気持ちだったことを、彼女はもちろん知りません。
作品名:ブラウンの瞳とブルーの瞳 作家名:ゆうか♪