待たせてゴメンね♪
俺は、真剣な表情でそう言うお多恵さんの言葉は尤もな気がした。
お多恵さんと別れたあと俺は、もし京子が許してくれなくても、やはり京子に謝らなければいけない。そう思い始めていた。――そうは言っても、やはり京子の家に行くだけの勇気はなかったから、俺は数日を実家で過ごすと、そのまま自分のアパートに帰って来てしまった。そのためか、心の中は澱が溜まったかのように重かった。
それから数日経ったその日、俺は意を決して手紙を書いた。
「前略 今ではもうきっと、俺のひまわり娘ではない君へ
あれから随分経ちました。お元気ですか?
今更こんな手紙を書いた所で、どうにもならないだろうことは分かっているんだ。
だけどどうしてもひと言君に謝りたくて、ペンを取ることにしました。
君は最後まで読んでくれるだろうか? でもお願いだ。できることなら最後まで読んで欲しい……。
――実は、君が会いに来たいと手紙を寄こしたあの日、俺は本当は君との時間を作るつもりでいた。君に逢えるのを楽しみにもしていたんだ。ところが……正直に言うよ。俺はその時、東京に来てからある女の子と知り合い、その子と付き合っていた。別に本気だったわけではないのだけど……。
しかし彼女は違った。俺を本気で思ってくれていたようだった。ところが俺の留守に君からの手紙を読んでしまい、君の存在を知ってしまった。そして見事に俺は振られ、彼女とはそれっ切りになった。
でも、別れ際に彼女に言われたんだ。『人を傷付けるとその報いが必ず返る』と。
そしてそう言われた時、彼女をひどく傷付けてしまったことに初めて気付いたんだ。
しかしそれは、同時に自分の君に対する裏切りを認識した瞬間でもあったんだよ。
立場が逆で、もし君が他の誰かに抱かれたりしたら、俺は許せるだろうか? と。
俺はきっと君を許せないだろう。それと同じことをしてしまったのだと。
俺は君を裏切ってしまった。その罪の意識が、君への手紙を書けなくさせてしまったんだ。そして、その後届いた君からの最後の手紙――それは最も俺が恐れていた事態だった。とうとう君が俺以外の男に抱かれるという。
俺はもう自暴自棄に陥ったよ。だから、やはり返事をしなかった。
でも今は違う。今は……。今は、君に心から謝りたい。きっと君は許してはくれないだろう。けれど謝らなければ、俺は一生後悔する――そんな気がするんだ。
勿論その後、他の女性とも付き合ったよ。でも違ってた。やはり君とは違うんだ。だから今なら言える。俺の正直な今の気持ちを伝えるよ。図々しい奴だと思うだろうけど……。
今でも君を愛している。京子、俺にはやはり君が全てなんだ。
ひまわり娘の太陽になりたい 京平より」