待たせてゴメンね♪
カレンが囁くような声で、少し俯き加減でそう言った。
「そ、そんなぁー」
俺は声にならないような声で返した。
正直な所、俺はまだ将来のことは何も考えていなかった。勿論、カレンは最高の彼女だとは思うけど、『結婚』はまた別のものと言うか、マジ考えてなかった。
それを正直に言うと何と言われるか……。
「ごめん。少し考えて見るよ」
取り合えず俺はそう言って、その場を繕うしかなかった。
するとそれを黙って聞いてた先輩が、
「カレンちゃん、そんなに結婚したいの? それとも京平がそんなに好きなの?」
と聞いた。
カレンは少し考える風にして、
「ええ、私もまだそんなに真剣に考えていた訳じゃないけど、でも京平のことは好きだから……」
「でもねカレンちゃん、京平はまだどうこう言っても大学生だし、就職して一人前になってからだよ。結婚なんて考えるのは」
と、助け舟を出してくれた。と、思ったら、
「俺みたいにねっ!」
と胸を張った。
『なんだょー、それが言いたかったのかぁ……』
ガクッときた。
まぁともかく、その先輩の言葉に話は一応落ち着いたが、それでも少し気まずい雰囲気を感じた俺は、
「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」
と言って席を離れた。
俺がいない間に先輩はカレンに、
「カレンちゃん、良かったら京平のこととかで悩むことあったら、俺で良かったらいつでも相談に乗るよ。俺は京平のことなら何でも知ってるからさっ!」
と言って、彼女と電話番号やメアドを交換していた、
そのことを俺は、ある出来事が起こるまで知らずにいた。
俺がトイレから戻ると、先輩とカレンは俺の悪口で盛り上がっていた。
「もう、勘弁してくださいよぉー先輩。俺、くしゃみが出っ放しですよー」
俺がそう言うと、しばらくは大笑いの渦が巻いた。
その時また、メロディーが……。誰かが ジュークボックスをかけたらしい。
いいえ星の〜ダイヤも〜海に眠る真珠も〜
きっとあなたのキスほど〜
煌めくはずないものぉ〜
煌めくはずないものぉ〜
以前聞いた曲だ。想い出のある曲だった。
あの時の――彼女はどうしているんだろう。