赤い文字
あて先も無ければ切手も貼られていない封筒。自室に戻り、それを開く。中には手紙が一通だけ二つ折りにして入っている。ショウタは薬で半分寝ぼけながらそれを開く。
そこには赤い文字で≪来た、見た、≫と書かれてあった。
ショウタは全身の毛穴から虫が這い出してきたような恐怖を感じる。膝が震えて思考ができない。犯人が近くにいて手紙を置いて行ったのだ。居所が知られている。
次の瞬間、ベッドに置いてあった携帯電話から着信音が流れる。テライからだった。早く助けを呼ばなくてはいけない。
すぐにショウタは電話を拾い上げると通話ボタンを押した。
「もしもし、テライか、実は―――!」と、ショウタが伝えようとした瞬間、電話口から一言だけ、声が聞こえた。
『―――勝った―――』
部屋のエアコンからは、いつか嗅いだことのあるむせ返る臭いがした。