素晴らしい偶然
素晴らしい偶然
吉野雅哉は美しい残雪の山々を写真に撮りたくて、長野へ出かけてきた。彼は車で移動しながら二百枚以上も、山と田園と防風林に囲まれた農家などの写真を撮った。それらの風景は写真の題材として、最高のものだと彼は信じていた。天候にも恵まれた。
だが、彼は孤独であり、孤独であることに満足はしていなかった。助手席に若くて優しい性格の女性を乗せてきていたなら、風景はより一層、美しく感じられるのではないかと思った。昼食の蕎麦は、もっと美味く感じられただろうと思った。彼は二十二歳だった。
吉野は明らかに探し回り、その少女を田園風景の中で発見したのだった。夕陽の中の少女は、白いワンピースが似合っていた。滅多に出会えない、素晴らしく可愛らしい少女だった。はっきりした根拠はないのだが、彼女の年齢は十七歳だと、吉野は推定した。最後の一枚に、彼はその少女を映した。
渋滞する高速道路を七時間も走って帰宅した彼は、その翌日に撮影済みフィルムを写真屋に持って行った。