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あなた待ち島

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 晩秋の比良の山並みは、すっかり紅葉で色付いている。観光船はそれを遠くに望み、琵琶湖の北へと白波を蹴って航行して行く。
 湖上に吹く風は肌寒い。あと一ヶ月もすれば、多分初雪が降ることだろう。

 凛太郎は、京都に勤めるサラ−リ−マン。今観光船のデッキに立って、湖上遥か遠くを眺める。目の前にはさざ波打つ茫々とした湖が広がっている。
 凛太郎は冷えた空気を大きく吸い込んだ。そして、「ふ−」と重く吐き出した。 
 横には由奈が寄り添っている。凛太郎は冷えた由奈の手をそっと握る。由奈はそれにしっかりと握り返してきた。
 二人の愛は多分確かなものなのかも知れない。そんな二人は、これから観光船で向かう先の方を何も言わずに眺めている。


作品名:あなた待ち島 作家名:鮎風 遊