小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

プロポーズ歌合戦

INDEX|2ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

プロポーズは歌によって行う習慣のミュージ星。当然のように音楽産業が経済を引っぱっている。音楽学校も多いのだが、これはミュージシャンになるための学校だ。プロポーズのために音楽学校に行く者はいない。まあ、いくらかは有利であることは否めないのであるが。もちろん国民全部が恋をしている訳ではないので失恋の歌、歌詞の無い曲、ほのぼのとした歌もある。そして失恋の歌が多いことはこの星にも事実としてある。

プロポーズの歌で、結果は歌の優劣ではないことは皆知っている。それでも年頃になると、それぞれが如何にして相手の心を打つ歌が歌えるかを考えることになる。カラオケという便利なものがあるので、皆ここで研鑚を積むのだった。歌はもう娯楽ではなく必修のスキルのようなものだ。そこで自作の愛の歌などを用意して歌う者も現れるのだが、もうすでに親密になっている場合を除き、大概が相手をしらけさせることが多いようだ。

このミュージ星のあちこちにあるカラオケ、その密室で、二人きりでプロポーズをするという行為は倫理に背くと考えられている。そしてギターやヴァイオリンなどの楽器に頼ることも卑怯な手であると考えられている。ごくたまにそういうプロポーズで成功した例もあるようだが、その者たちは声をひそめて自虐的に告白するのだった。

公園などが主なプロポーズの場所ではあるが、野外は声が拡散して伝わりにくい。必然的に色々な場所がプロポーズに利用されている。体育館、店が閉店したあとのアーケード内、トンネルの中などが音の反響でいい効果を生むことがある。

この星のプロポーズは、複数人で行われることが多い。例えば女性一人に四、五人の男性という具合に。女性は数人の男達を競わせて自分がその中から一人を選ぶという行為が好きなようだ。もちろん反対に男性一人に女性が数人ということもある。この星の風習で面白いのは、誰かが一生懸命愛の歌を歌っているそばで邪魔をすることが許されるのだ。もちろん歌や相の手でやるのだ。これくらいの邪魔で挫けるような愛では結婚後が心配でもあるというわけだが、邪魔をすることが趣味の奴もいる。端からプロポーズをしようとは思っていないのだ。

しかし、何が起こるか、何に惹かれるか分からないのも恋愛。絶妙に本命の歌を邪魔した男が、女に気に入られることもある。

だから、様子を伺い二人っきりになった所で歌い始めても油断は出来ない。いつの間にか邪魔が入ることは避けられない。

作品名:プロポーズ歌合戦 作家名:伊達梁川