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表と裏の狭間には 六話―海辺の合宿―

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「お前らまずは荷物を運べぇえええええええええええええええ!!!」
煌が本気で怒鳴る羽目になった。

ぶーぶー文句を垂れるゆりと輝に荷物を運び込ませる。
「掃除はする必要ないわ。管理人がやってくれてるはずだから。」
その言葉通り、部屋は綺麗になっていて、掃除する必要はなさそうだった。
「先に施設を案内するわ。ついてきなさい。」
ゆりに続いて別送の中を探索する。
キッチン、リビング、遊戯室、大きな部屋が二つに、小部屋が10室。そして何より。
「風呂でかっ!」
巨大な露天風呂だ。
海を臨む構図になっている。
まるで温泉のような巨大なものだった。
なんて、ふざけた設備を紹介してもらったら、いよいよ着替えだ。
二つの大部屋に男女で分かれて着替える。
………女子部屋のほうが若干騒がしかったが、気にしない気にしない。
俺たち男子の水着は、それぞれガラこそ違えど、普通のトランクスタイプの水着だった。
さて。
女子はまだのようなので、ビニールシートやボール、パラソルなどの道具を砂浜に運ぶ。
プライベートビーチで、人は全くいない。
空は陽光降り注ぐ快晴。
海はどこまでも蒼く、砂浜は純白に輝く。
セミの鳴き声と風の音、繰り返し寄せては返す波の音が綺麗に調和する。
…………最高だ。
パラソルを設置し、その下にシートを広げていると、やがて女子勢がやってきた。
「おまたせー!」
雫は俺が選んだ普通の水着、ゆりはワンピースタイプ、耀は競泳用の水着で、理子は……。
「はぁ…………………。」
「さっすが理子、よく分かってるっすね!」
一つ問いたい。何故『白スク』なんだ。
「気にしちゃダメだよ。」
本人が言ってもなぁ………。
と、雫の顔が少し赤くないか?
「雫どうした?」
「おっ、お兄ちゃん!?な、ななななな、なん、なんでもないよ!?」
そこまでどもってどうして誤魔化せると思うんだろう?
「お前ら雫に何した!?」
「別に何もしてないわよ。」
「何にもしてないの。」
「わっちが何かするわけないじゃん。」
お前らグルか。グルなのか。
よってたかって俺の妹に何をした。
しかしそんな俺の疑念などどこ吹く風で、連中はいそいそと準備体操を済ませる。
「さて。」
と、今にも駆け出そうとしていたゆりと輝の肩を、先手を取った煌が押さえた。
「まずは、日焼け止めを塗れ。」
という訳で、日焼け止めを塗る。
「お兄ちゃん、日焼け止め塗ってくれる?」
「はいはい。じゃあそこに寝っころがれ。」
シートの上に寝そべった雫の背中に、日焼け止めを塗る。
「くすぐったいよ~。」
「我慢しろ。」
こうやって塗ってやるのも、前にプールに行ったとき以来か。
前にプールに行ったのはいつだったかな。
引っ越す前、まだ『あいつ』がいたときか。
懐かしいな。
「よし、終わったぞ。」
「お兄ちゃんにも塗ってあげるね。」
「ああ、頼む。」
背中は素直に塗ってもらうことにする。
俺たち以外の連中も日焼け止めを塗り終え。
さて。満を期して。
「泳ぐわよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「ヒャッホォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
約二名が我先にと駆け出した。
俺たちも、やれやれとばかりに、海へ向かった。

海といっても、本気で遠泳する奴なんてそうはいないだろう。
ゆりと輝も、ある程度泳いで満足したらしく、普通のテンションに戻っていた。
まあ、『普通』であって、『普段』という意味じゃないのだけど。
海に来ると、どうしてこうも水の掛け合いに熱中してしまうのだろう。
「それっ!」
「ちょっ、やったわね!?待ちなさい理子!!」
「こっちに飛ばすとはいい度胸なの!!」
「ひゃっ!え、えいっ!!」
女子勢テンションたけー………。
「油断大敵っすよ。」
と、俺の顔面に水が浴びせられた。
「輝…………ってお前ちょっと待て!!」
水鉄砲なんてどこから持ってきたんだ!?
と、輝は俺の後ろ目掛けて水鉄砲を放つ。
そこにいたのは。
「……甘いですね。」
ドバァアアアア!!と、物凄い勢いで水を放つ礼慈だ。
「ちょっと待て!そのタンクは何だ!?」
礼慈が持っていたのは、マシンガンを模した水鉄砲で、巨大なタンクがついている。
お前ふざけんなよ。
唯一の常識人であるはずの煌も、いつの間にか水鉄砲を調達してるし。
あまつさえ女子と戦闘を開始してるし。
「……………。」
俺も混ぜろよ!

その後はビーチバレーに興じた。
女子対男子。
四体四で普通に戦ったのだが。
女子つええええええ!!
煌も輝も運動が得意だし、俺もある程度はできるし、礼慈はびっくりするほど上手いのだが。
向こうは運動が苦手な雫がいるというのに、圧倒的に強かった。
特にゆりが半端ない。
ボールが、有り得ないほどの鋭角を描いて飛来するのだ。
取れるわけがない。

スイカ割りなど、その後もベタな遊びに興じ。
夕方である。
「わっち、流石に疲れたんだけど………。」
「あたしもよ。」
「ぜぇ、ぜぇ、はしゃぎすぎたっすね……。」
………この三人本当にダメ人間だな。
「お姉様、お疲れでしたらお部屋までお連れするの。」
「いいわよ別に!疲れてるのをいいことに襲う気でしょアンタ!」
なんていつものやり取りをしつつ。
「おい、晩メシどうすんだ?」
煌が現実的なことを言う。
「いい加減買い物に出ないと、流石にヤバイだろ。この地方じゃ。」
「そうね。じゃあ、料理当番決めましょう。じゃんけんで一発勝負!行くわよ、じゃんけん、」
「まず料理が出来るかどうかを聞け!!」
「え?あたしたちは全員出来るわよ。紫苑君と雫ちゃんは?」
「ある程度なら。」
「料理は得意です。」
「じゃあ行くわよ、じゃーんけーん、」
「あ、あのっ。」
「今度は何!?」
「良かったら、私、やります!」
雫が自ら名乗り出た。
まあ、雫、料理好きだしな。
「じゃあお願い!あたしたちも手伝うから。」
「は、はい。」
嬉しそうだな。
まあ、こいつが嬉しそうにしてるならなによりだ。
「で?結局何作るんだ?」
「大抵のものなら作れますが………この人数分用意するとなると、やはりカレーかな?」
「カレーを八人分だな。」
「ああいえ、二十人ほど買ってきておいてください。」
「二十人だと!?」
「はい。一晩置いて朝食に使えます。余った分は昼食にスープとして出せますので。あと、明日の昼食にサンドイッチも作るので――」
「待て、メモを取るからちょっと待て。ああ、いいぞ。」
「まずカレーの材料です。人参、玉葱、ジャガイモ、小麦粉、」
「小麦粉だと!?」
「はい。小麦粉からルーを作ります。」
そう、雫は小麦粉からルーを作れるのだ。
これが結構美味い。
「でも雫、調味料はあるのか?」
「うん、家から持ってきてるよ。」
マジか………。
「小麦粉を―――」
さて、そんな訳でカレー二十人分と、人数分のサンドイッチの材料を買いに行く煌であった。
随分とふざけた物量だが、一人で大丈夫か?
まあ、スクーターだし、二人以上行っても邪魔なだけか。

………さしもの煌も悪戦苦闘したようだ。
「スクーターの出力が落ちただろうが。」
雫は大人数分のカレーでも小麦粉からルーを作りたいらしい。