嘆きの運命
せっかくわしが、違う人生の記憶を、冥土の土産に持たせてやろうと思ったのに、バカな男よのぅ。
あのまま、良い夫、父親でいれば、死んでからの閻魔様の評価も違っただろうし、あの世での席も少しは良い所になることができたのに……。
わしは運命の神じゃが、所詮自分の運命を変えるのは自分でしかないのに、人間とは愚かなものよのぅ。
あれほど、後悔し反省していたくせに、1ヵ月しかもたんとは……。
これで、わしのポイントも、また上がりそこなったわ。
とほほじゃ。
どこぞに、自分の運命を変えようと、真剣に思う奴はおらんのかのぅ。
そういう奴に出会わんことには、わしのポイントも下がりっ放しじゃ。困ったもんよのぅ……。
運命の神様は、病室の隅で嘆きの呟きをもらすと、杖を突きながらどこへともなく去っていった。
もちろんその姿は、祥子にも学にも見えてはいなかった。
もしあなたが目覚めた時、枕元に、白髪でよれよれの着物を着たじいさんが立っていたら、ひょっとしたら次は、あなたの運命を変えようとしてくれているのかも……。
どんな運命がいいか、今から考えてみてはどうかな?
ひひひ……しかし、実際には自分が変えるんですぞ!
運命というものは……。
「アーッハッハッ……」
遠くで神様の豪快な笑い声が、ちらっと聞こえた。
ような気がした…かも…。
おしまい、、、じゃ。