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夢の途中10 (302-352)

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章タイトル: 第33章 乳房 2008年秋


翌朝香織が目覚めると、目の前に優一の微笑む顔が在った。

『アラ? いやだァ~、ずっと見てらしたの?
 恥ずかしいわァ~、この歳で男の人に素ッピンを見られるのは・・・』

香織は優一の腕の中で両手で顔を隠した。

「そんな事無いて・・・  綺麗やなァ~て見とれてましたんやでぇ~♪」

『嘘ばっかり♪』

「ホンマやて・・香織は綺麗や・・・年相応の美しさが滲み出てる・・・ホンマや、これはホンマやで?」

『うふふふ♪有難う♪ ねぇ、・・・・・・オハヨウのキス、して?』

「ああ♪チュツ♪  これ位?」

『ダメ!もっと!』

「チュ~~~~っ!   はァ、はァ、はァ、これ位?・・・」

『うん♪許してあげる♪』


優一はシーツの中で何も身につけていない香織の乳房を弄った。

香織は肌理の細かい白い肌に、胸に美しい曲線を描く乳房を持っていた。

50歳を過ぎてもその曲線は張りを失っていない。

けれど・・・・左乳房の下側に古いがかなり大きな手術痕が在った。

「香織、この傷は?」

『うん・・・コレは乳がんの手術の痕よ・・・
私、北海道に行った3年目の春に、市民検診で乳がんの疑いが在るって云われたの・・・・
ほんの初期だから、手術すれば確実に治るって云われたんだけど、胸にメスを入れる事が嫌でね・・・
前の職業柄、乳房を切除した女性や、抗がん剤治療で苦しむ人を何人も見て来たから・・・・
随分迷ったわ・・・・
それに・・・
神戸を出た時点で、もう夢も希望も捨てていたから、このまま死んでしまうのも、
いいかなって・・・
そんな時、帯広に居た和子さんが私の癌の事を知ってね、

「何故、生かせる命をそんなに粗末にするんだ!」って怒られたわ・・・
「生きようと思っても生きられない人の想いも在るのに・・」って・・・
「生きていればきっと良かったと思える日が来る・・・神様はちゃんと見ていて、御褒美をくれる」って云われてね・・・
和子さんに背中を押されて手術する事にしたの。

手術は当時和子さんが勤めていた帯広医科大学でして貰ったのよ。
開胸して腫瘍の組織を調べたら、悪性とも良性とも断定しにくいものだと云われた・・・
でもまだ小さい腫瘍だったから、出来るだけ切除する範囲を小さくして貰って、痕も出来るだけ残らないように努力して貰ったの。
それで再発したなら今度こそ諦めようと思ったわ・・・
術後、抗がん剤療法も2回受けた・・・・
辛くてねぇ・・・
以前、自分が看護師をやってた時は患者さんに、
「頑張って!頑張ってください!」って言ってたけど、
逆の立場になって、「自分はもう十分頑張っている。これ以上どう頑張ればいいんだ・・」って思った・・・
だから、昔の自分はなんて無神経な事を言ってたんだろうと思ったわ・・・

髪の毛も全部抜け落ちてね、ウイッグも用意したけど、なんか付けるのも面倒で、
頭にバンダナや野球帽被ってすましたわ。
あれから・・・9年?・・・・毎年定期健診には行ってるけど、
お陰さまで再発の兆候は無いのよ。』

「・・・・そうか、手術して良かったなァ・・・・そのままにしてたら、僕らはこうして出逢ってないかも知れん・・・」

『うん、そうね・・・あの時あのままにしてたら、優一さんを愛する事も無かったわね・・・・
そして昨日の夜、あんなに激しく愛される事も♪(#^.^#)ハゲシカッタ♪』

「(=^・^=)そうかな?香織も結構、激しかったぞォ~♪(#^.^#)」

『いやだァ~、そんな事言って♪(#^.^#)  ねぇアナタ、もう一度キスして?』

「ああ、2度でも3度でも♪(^_-)-☆チュツ♪」


カーテンの隙間から零れ入る朝の陽の中で、優一は香織を抱きしめ唇を重ねた・・・
陽に焼けた優一の背中に香織の白い腕が・・・

もう離さないと強く抱きしめていた。





予定より1時間遅く朝食を摂った二人は、優一の運転するレンタカーで急ぎ関西空港を目指した。
午前中の便で香織は旭川行きの便に乗らなければならなかった。
車の中で
「もう熊本の仕事は終わるやろ。年内には一度札幌に帰る事になる。
そやけど・・・・また大阪本社か東京支社に籍を置く事になるやろなァ・・・・
出来るだけ、時間を創って藤野に帰るから・・・・」

『うん、待ってる・・・・これじゃ平安時代の恋人と同じ、【通い婚】ね♪』

「ああ、そうや、【通い婚】や♪  
定年まであと6年弱、その時は藤野で香織と花でも造って暮らしたい・・・
喫茶店のマスターもエエなァ♪(^。^)y-.。o○」

『うふふふ♪なんか楽しい♪(#^.^#)』

幸い渋滞も無く搭乗時刻30分前に着いた。
手荷物検査所の手前で別れなければならない・・・・

「そしたら香織、気を付けて♪(^^)/」
『ええ、アナタも・・・(/_;)・・・・・』

「・・・・・香織、こっちおいで?」
『  え?  』

手荷物検査所の入り口で優一は香織を抱きしめ、一目も憚らず口付をした♪

別れを惜しむように長い抱擁を続けた・・・・♪

   (^_-)-☆




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章タイトル: 第34章   熱愛 2008年冬


香織が帰った翌週から約一週間、藤野にまとまった雪が降った。
例年より半月早い、根雪になる量の降雪だった。
これから4月上旬までの半年、藤野を含む道央は雪に包まれる。

夢島建設のバイパス工事は川沿いの道路の部分は既に完成していて、10月30日藤野市浅間市長のテープカットにより仮開通していた。
正式には来春4月より再開する第二期工事が完工して、藤野の街を縦断するバイパスは完成と云う事になる。

仮開通と云えど、これだけでも藤野の中心部からスキー場に隣接する新プリンセスホテル等のホテル街との交通の連絡は格段に良くなり、渋滞も相当量緩和されるはずだ。
今月下旬にはスキー場開きも行われ、日本全国、世界各国のスキーヤー、スノーボーダーが、藤野の良質なパウダースノーを求めてやって来るだろう。

夢島建設の現場事務所の人員はグッと減り、下請け・孫請けの人員は来春の工事再開まで撤収しており、古畑ら本社の保全管理部門の人員のみが詰めていた。
業務は来春の工事再開の準備と開通部分の保全だけなので、大した仕事量は無かった。

古畑は久しぶりに【喫茶・ラベンダーの香り】に顔を出した。
「ママ、久しぶりィ~♪ 先々週、また関西に行ってたんだって?仮開通式の時、熊田ファームのオヤジさんが言ってたよ。」
『アラ、古畑さん、いらっしゃい♪ ええ・・・、チョット妹の処にね^^;・・・』
まだ優一との事は誰にも伏せていた。
「これから京都とか、良いんだろうなァ~♪嵐山とか、高雄とか紅葉がさァ~♪」
香織は、ドキッとした。
「ああ、そうそう、林部長が来週札幌に帰って来るって♪
藤野にも寄るって云ってたよ♪仮開通した道路も観たいそうだよ♪」
その事は毎晩のメールで知ってる♪