【第七回・参】幸せ捜査網
「これは乾闥婆にそしてこっちは矜羯羅…で…」
矜羯羅と乾闥婆に何かを手渡した緊那羅が京助に目を向けた
「これが京助のだっちゃ」
そして京助の手を取り何かを握らせた
「これは…中に入っているのは花弁?」
乾闥婆が聞く
「そうだっちゃたぶん最後に咲いた花の花弁を押し花にして…」
緊那羅が説明する
「どうやってこの透明なヤツにいれたの?」
不思議そうに桜の花弁の入った透明の板を見ながら矜羯羅が聞く
「プラ板ってんだソレ。二枚で花弁挟んで熱加えると縮んでこうなんの」
京助が説明する
「…二枚?」
乾闥婆が二枚重なっているのに気付いて緊那羅を見た
「矜羯羅と乾闥婆は誰かにあげるために探していたみたいだっちゃから…二枚ずつ」
緊那羅が指を二本立てて言う
「花弁は五枚だから…京助にも作ったんだっちゃ」
緊那羅が京助に笑顔を向けた
「お前のは?」
京助が緊那羅に聞く
「私は見つけたからそれでいいんだっちゃ」
どことなく照れくさそうに緊那羅が答えた
「…いいの?」
矜羯羅が聞く
「花じゃなく花弁だから…効果ないかもだけど;」
苦笑いで緊那羅が言う
「…有難う御座います」
乾闥婆が微笑んで軽く頭を下げた
「俺ももらっていいんか?;」
京助が緊那羅に聞く
「花弁を押し花にって案くれたのは京助だし…御礼も含めてもらって欲しいっちゃ…それに…」
緊那羅が顔を上げて京助を真っ直ぐ見て
「私は京助には幸せでいて欲しいんだっちゃ」
満面の笑みで言った
「…何があっても」
そして最後に聞き取れないくらいの小さな言葉を付け加えた
「…んじゃ…ま…もらっとく。サンキュな」
少し首をかしげながらも京助がお礼を言った
「乾闥婆は鳥類にやると思うけど…お前は誰にやるんだよ」
京助がポケットに花弁をしまいながら隣にいた矜羯羅に聞く
「…秘密だよ」
矜羯羅がふっと笑って背を向け歩き出す
「京助ー!!! エビフライなくなんぞ-----------------------!!」
坂田が大声で言う
「なっ!? マジで!?;」
その声で京助が駆け出し矜羯羅を追い抜いていく
「…緊那羅…」
乾闥婆が緊那羅に声を掛けると緊那羅がどことなく寂しそうな悲しそうな笑顔を乾闥婆に向けて小さく頷いた
作品名:【第七回・参】幸せ捜査網 作家名:島原あゆむ