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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・参】幸せ捜査網

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「ぷしょっ!!」
目玉焼きの黄身に箸で穴を開けて醤油をたらし混ぜて白米の上に乗せた悠助がくしゃみをした
「大丈夫だっちゃ?;」
緊那羅が箸をおいて側にあったティッシュの箱を差し出した
「そろそろ悠ちゃんマスクの季節かしら」
母ハルミが立ち上がり茶箪笥の引き出しを開けて何かを探し始めた
「ありがと慧喜」
垂れていた悠助の鼻水を慧喜がふき取ると悠助が笑顔を返す
「新婚さんいらっしゃ~ぃ」
テーブルに両肘を付いて味噌汁を飲みながら京助が言う
「やうやくコッチも桜の季節かァ…まぁ…早咲きの桜は見たけどすぐ枯れたしな」
チラッと横目で緊那羅を見つつ京助が言った
「あれは…; …桜の木に悪いことしちゃったっちゃ…よ…ね…;」

慧喜が初めて此処に来た時 緊那羅は栄之神社の桜の木に真冬だというのに花を咲かせた
「もう一回咲いてくれるといいんだっちゃけど…」
その桜の木は茶の間からは見えないとわかっていても緊那羅は窓を見た
「…まぁ大丈夫だろ気にすんな」
そんな緊那羅に京助が言う
「そういえば京助アンタ珍しく早起きだけど何かあるの?」
引き出しを閉めて母ハルミが悠助にマスクを手渡しながら京助に聞く
「何かないと早く起きちゃ駄目なんかい俺は;」
箸を咥えて食べ終わった食器を手に持ち立ち上がった京助がブツブツ言う
「駄目じゃないけど珍しいわねって…あ、食器ちゃんと桶の中に入れておいてね?乾くと取れにくいから」
「へいよ」
器用に肘で戸を開けて京助が茶の間から出て行った
「ごちそうさまでした」
そのすぐ後 緊那羅が箸をおいて両手を合わせた
「悠助と慧喜の分も下げていいっちゃ?」
自分の食器を重ねつつ緊那羅が慧喜と悠助に聞く
「あ、うんありがと緊那羅」
マスクをした悠助の頭を撫でながら慧喜が言う
「ありがと緊ちゃん」
悠助も鼻水を啜りながら笑った
「わるいわねぇ…ついでに洗ってくれないかしら?」
母ハルミが湯飲みを持って緊那羅に聞いた
「いいっちゃよ?」
それに対し緊那羅が笑顔で答える
「あら~! ありがとう!! 助かるわァ」
母ハルミが心底嬉しそうに言った

「何? 押し付けられたんか;」
台所で水を飲んでいた京助が全員の食器を持ってきた緊那羅に聞いた
「ううん? 私がやるって言ったんだっちゃ…って京助; 一回水で流してから入れて欲しかったっちゃ;」
卵の黄身と飯粒が浮かんでいる桶を見て緊那羅が溜息をつき中から食器を取り出した
「悪りぃ;」
ハハッと笑って京助は水を飲み干した
「…お前主婦化してきたよな」
京助の言葉に桶の中に必要以上に洗剤を入れた緊那羅が京助を見た
「はッ!?;」
片手に持った台所洗剤(白いジョイ)からシャボンの泡を出しつつ緊那羅が声を上げた
「なんつーか…いつ嫁に行ってもおかしくないというか…掃除、洗濯から料理まで…」
京助が指を折りながら言う
「…ハルミママさんに教えられたんだっちゃけど;」
そういった緊那羅の手には今だシャボンを出しているジョイが握られている
「母さんだいぶ楽らしいぞ? サンキュな」
京助が笑いながら水が入っていたコップを桶の中に沈めた
「や…私は…ただ…」
緊那羅がジョイの蓋を閉めて俯いた
「私は…ただ…」
「京助ー!! 電話よー!!」
何か言いかけた緊那羅の声が母ハルミの声でかき消された