恋は未完のままで
『恋は未完のままで』
今年の夏は暑かった。
そんな夏も終わり、今はもう九月。
散策すれば、爽やかな秋風が頬をさすっていく。そんな季節になった。
霧澤涼太(きりさわりようた)は、今日はアパートの荷物を片付けている。
なぜなら、それはサラリーマンに付きものの転勤。この会社に勤め出してもう十五年が経ってしまった。
そして今回また辞令をもらい、三度目の転勤だ。
しかし、なんとなく嬉しい。
なぜならこの地で五年間の単身赴任をして、やっと地元の京都に引き上げられるからだ。
「まあこの町も、それはそれなりに楽しかったけど、やっと京都に戻れるか」
そんな独り言を感無量に呟きながら、せっせと片付けをしている。
そんな時に、戸棚から一本の筒が涼太の足下に落ちてきた。
「あっと、ここに置いておいたんだよなあ」
涼太はそんなことを呟きながら、その筒を拾い上げた。
蓋を開け、そして中から画用紙に描かれた一枚の絵を摘み出した。
それからそれをそっと広げてみる。