仕事伝説 ―彼と彼女―
やっと、この家の主――――ディーク・ローが帰ってきたようだ。イリスは椅子から腰を上げ、彼を待った。
「よっ。仕事終わったぜ」
彼は陽気に言ったが、彼女はそういう気にはなれない。
「どうしたんだよ。何か暗いぜ?」
「悪かったわね、それは生まれつきよ。・・・・・・そんなんじゃ、ないわ」
そして、イリスはそれを差し出した。
謎の男から受け取った、自分が居た国の印で封された手紙を。
「・・・?何じゃこりゃぁ?俺にか?」
「ええ。私の国から」
そう言うと、ディークの目つきが変わった。急いで手紙を受け取ると、ナイフで蝋印を解き、中身を読んだ。
「・・・・・・やっぱり、俺の考えは浅かったかもなぁ♪」
「真面目な顔で呑気に言える問題じゃぁ無いのよ、ディーク?」
笑う彼に、イリスはナイフを突き付けて言った。
あの事件のせいで、やはり自分が生きている事がはっきりとしてしまった。いや、それだけではない。
「まさか・・・、国王陛下が動くなんてね・・・・・・」
「お前って、ホント凄いスパイだったんだなぁ・・・」
イリスの過去を多からず知るディークは、うんうん、とうなずいて言った。
「だからね、そういうのは呑気に言う事じゃないのよ?」
再びディークの首元に、ナイフが突き付けられたのは、言うまでも無い。
つづく
作品名:仕事伝説 ―彼と彼女― 作家名:竹端 佑