夢の途中9 (270-306)
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章タイトル: 第30章 想い人の秋 2008年秋
道央の秋の訪れは早い。
9月も中旬になると朝夕は寒い位に気温が下がる。
陽のある日中は半袖のTシャツでもすごせたが、陽が傾くと途端に寒くなり、薄手のカーディガンを羽織りたくなる。
更に10月に入れば、途端に石油ストーブが恋しくなるのだ。
香織と優一はその後毎日欠かさず一通か二通のメールを交わしていた。
互いにその日に起きた他愛もない出来事の報告だった。
日本列島のほぼ北と南に住む【いい年をした】大人の男女が、まるで中学生の交換日記のように其々の日常を知らせ合った。
考えようによれば、それは長く連れ沿った夫婦の会話の様でもあり、
すぐに会えない場所にいる互いの、何気ない日常の出来事こそが、最も知りたい事なのかも知れない。
2008年9月13日 20:14
件名:お疲れ様
「お疲れ様。 今日そちらから送ってくれたラベンダーのポプリの小瓶を受け取ったよ。
有難う。良い香りだね。熊田さんの農場のモノだね?
宜しく云っておいてね(^_-)-☆
今日も仕事が終わってから部下の現場監督達と、町営温泉に云って来た。
此処も300円で入れる。藤野も結構日帰り温泉が多いと思ったけど、此方は阿蘇山が在る関係で、あちらこちらに温泉施設がある。中で食事も出来るしね。
今日は呑まない部下が居たので、他のメンバーは湯上りの生ビールを飲む事が出来た♪(^^)/
極楽ゴクラクの一日でした♪(^_-)-☆」
最近の優一のメールには頻繁に【顔文字】が登場するようになった。
香織も負けずに【顔文字】で返した。
2008年9月13日 20:36
件名:reお疲れ様
『お仕事、お疲れ様<(_ _)>
良かったわね、運転手に成ってくれる人がいて♪(^_-)-☆
湯上りの生ビール、美味しいものね♪
でも、送ったポプリ、一度宿舎のバスタブのお湯に入れてみて?
とってもいい香りがして癒されますよ♪
その後のビールもまた味が変わって美味しいかもよ♪
こちらは朝晩かなり気温が下がって来ています。
そちらも山に近い場所だから、お腹出して寝たら風邪をひきますよ?
お身体を大切にネ♪(^_-)-☆オヤスミ』
以前、優一は9月に成れば一旦は藤野に戻ると言っていた。
しかし、9月10月は多くの台風が日本に上陸する。
北海度まで北上する台風は少なくても、沖縄・九州は台風の通り道だ。
従って、優一が赴任した阿蘇周辺の道路は調査と同時に台風で被害が発生した場合、直ちに保全修理に向かわなければならなかった。
つまり、9月10月は現場に張り付いたまま離れられないのであった。
迂闊にも優一はその事を失念していて、安易に「9月には・・・」と香織に言ってしまったのだ・・
優一はその事を香織には詫び、古畑に頼んで常盤ホテルを引き払って貰った。
そして、優一が必要とする身の回りの物は香織が常盤ホテルの優一の部屋で整理し、モノによっては洗濯をした上で熊本に送った。
その荷物の中に、熊田ファームで買い求めたラベンダーのポプリを詰めた小瓶を忍ばせておいたのだ。
その小瓶の蓋を開ける度、優一は香織の事を想い浮かべた。
まだ優一は香織に自分の気持ちを伝えていない・・・
8月、あの神戸の駅で別れ際、意を決して言葉にしようとしたが、残念ながら伝える事が出来なかった・・・
瑛子を失って以来、こんなに高揚する気持ちは初めてだった。
54歳となり、心血を注いできた会社人としての時間も後6年を切った。
嘱託となって残ると云えば、優一程の技量があれば会社としても異存は無いと思うが、
60歳の定年を機に全く別の生き方をしたいと最近考えるようになってきた。
それは、この藤野の土地で土に触れながら、愛する女と二人余生を過ごせたら・・・
と云う、
実務派の優一自身かつて考えた事も無いような甘い生活であった。
それもこれも、この藤野と云う大自然の中で、香織と云う女性の存在があればこそ湧いて来た考えである。
毎日、香織とのメールでの交信は欠かさないが、彼女へのプロポーズをメールで済ます程、優一は実務的では無かった。
だからこそ、メールの内容は勤めて事務的にしたのだ。
香織に送る文面は何時も短い。
しかし、何度も何度も送る前に推敲した。
時には愛の告白に近い言葉を並べてみたくもなった。
けれど・・・・
次に会う時こそ、香織に総てをぶつける積りでいた。
だから、それまでは甘い囁きを封印する積りでいたのだ。
台風のシーズンが終われば、北海道には滅多に北上しない台風の代わりに香織に会いに行こう・・・
そして香織にこの想いをぶつけよう・・・
香織、愛してる・・・・僕と一緒になろう と・・・
優一の決意に添わず、この年は九州に上陸する台風は多かった。
その多くは沖縄・九州に上陸した後日本海を抜けるか、たまに迷走して関東に再上陸した。
その為、優一が熊本を離れる事は中々難しかったのだ。
月日は既に10月も半ばとなっている。
香織とのメールはその後も一日も欠かさず続いていた。
2008年10月16日 19:48
件名:こんばんは♪(^_-)-☆
『こんばんは♪もうお食事済みました?こちらは今日、今年初めての雪が降りました。
積もるような雪じゃないけど。 だからすごく寒くて、鮭とブロッコリーでクリームシチューを作ったのよ♪(^_-)-☆ お昼の時に小鉢に入れてランチにお付けしたら皆美味しいって♪ 古畑さんなんか三杯もお代りしちゃって。
優一さんに食べさせてあげたいなァ~(/_;)・・・・』
2008年10月16日 20:08
件名:reこんばんは♪(^_-)-☆
「こんばんは♪(^^)/ 鮭とブロッコリーのクリームシチュー?エエなァ~~!(ToT)/~~~
古畑の奴、食べさせんでエエねん!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
早く香織さんのシチューが食べたいよォ~!(>_<)
こっちもだいぶ寒くなって来たなァ・・・雪はまだやけど、熊本市内と違って、やっぱり山間部は冷える。」
2008年10月16日 20:19
件名:rereこんばんは♪(^_-)-☆
『うふふふ♪(^_-)-☆ そう言うと思った♪ でも、まだそちら、離れられないんでしょ?
今年は台風が多いものねぇ(/_;)・・・・・
もう少し近ければ、シチューのお鍋持って行くのに・・・』
2008年10月16日 20:37
件名:rerereこんばんは♪(^_-)-☆
「そうなんや、今年は台風の当たり年やなァ・・・
来週の週末、大阪には帰るんやけどな、月曜火曜が本社で会議の予定やから(/_;)・・・・」
2008年10月16日 20:50
件名:rererereこんばんは♪(^_-)-☆
『来週末大阪まではいらっしゃるの? 私も行こうかな?
金曜日午後から出れば、何とかその日の内には大阪に着くし♪(#^.^#)』
2008年10月16日 21:10
件名:rererereこんばんは♪(^_-)-☆
章タイトル: 第30章 想い人の秋 2008年秋
道央の秋の訪れは早い。
9月も中旬になると朝夕は寒い位に気温が下がる。
陽のある日中は半袖のTシャツでもすごせたが、陽が傾くと途端に寒くなり、薄手のカーディガンを羽織りたくなる。
更に10月に入れば、途端に石油ストーブが恋しくなるのだ。
香織と優一はその後毎日欠かさず一通か二通のメールを交わしていた。
互いにその日に起きた他愛もない出来事の報告だった。
日本列島のほぼ北と南に住む【いい年をした】大人の男女が、まるで中学生の交換日記のように其々の日常を知らせ合った。
考えようによれば、それは長く連れ沿った夫婦の会話の様でもあり、
すぐに会えない場所にいる互いの、何気ない日常の出来事こそが、最も知りたい事なのかも知れない。
2008年9月13日 20:14
件名:お疲れ様
「お疲れ様。 今日そちらから送ってくれたラベンダーのポプリの小瓶を受け取ったよ。
有難う。良い香りだね。熊田さんの農場のモノだね?
宜しく云っておいてね(^_-)-☆
今日も仕事が終わってから部下の現場監督達と、町営温泉に云って来た。
此処も300円で入れる。藤野も結構日帰り温泉が多いと思ったけど、此方は阿蘇山が在る関係で、あちらこちらに温泉施設がある。中で食事も出来るしね。
今日は呑まない部下が居たので、他のメンバーは湯上りの生ビールを飲む事が出来た♪(^^)/
極楽ゴクラクの一日でした♪(^_-)-☆」
最近の優一のメールには頻繁に【顔文字】が登場するようになった。
香織も負けずに【顔文字】で返した。
2008年9月13日 20:36
件名:reお疲れ様
『お仕事、お疲れ様<(_ _)>
良かったわね、運転手に成ってくれる人がいて♪(^_-)-☆
湯上りの生ビール、美味しいものね♪
でも、送ったポプリ、一度宿舎のバスタブのお湯に入れてみて?
とってもいい香りがして癒されますよ♪
その後のビールもまた味が変わって美味しいかもよ♪
こちらは朝晩かなり気温が下がって来ています。
そちらも山に近い場所だから、お腹出して寝たら風邪をひきますよ?
お身体を大切にネ♪(^_-)-☆オヤスミ』
以前、優一は9月に成れば一旦は藤野に戻ると言っていた。
しかし、9月10月は多くの台風が日本に上陸する。
北海度まで北上する台風は少なくても、沖縄・九州は台風の通り道だ。
従って、優一が赴任した阿蘇周辺の道路は調査と同時に台風で被害が発生した場合、直ちに保全修理に向かわなければならなかった。
つまり、9月10月は現場に張り付いたまま離れられないのであった。
迂闊にも優一はその事を失念していて、安易に「9月には・・・」と香織に言ってしまったのだ・・
優一はその事を香織には詫び、古畑に頼んで常盤ホテルを引き払って貰った。
そして、優一が必要とする身の回りの物は香織が常盤ホテルの優一の部屋で整理し、モノによっては洗濯をした上で熊本に送った。
その荷物の中に、熊田ファームで買い求めたラベンダーのポプリを詰めた小瓶を忍ばせておいたのだ。
その小瓶の蓋を開ける度、優一は香織の事を想い浮かべた。
まだ優一は香織に自分の気持ちを伝えていない・・・
8月、あの神戸の駅で別れ際、意を決して言葉にしようとしたが、残念ながら伝える事が出来なかった・・・
瑛子を失って以来、こんなに高揚する気持ちは初めてだった。
54歳となり、心血を注いできた会社人としての時間も後6年を切った。
嘱託となって残ると云えば、優一程の技量があれば会社としても異存は無いと思うが、
60歳の定年を機に全く別の生き方をしたいと最近考えるようになってきた。
それは、この藤野の土地で土に触れながら、愛する女と二人余生を過ごせたら・・・
と云う、
実務派の優一自身かつて考えた事も無いような甘い生活であった。
それもこれも、この藤野と云う大自然の中で、香織と云う女性の存在があればこそ湧いて来た考えである。
毎日、香織とのメールでの交信は欠かさないが、彼女へのプロポーズをメールで済ます程、優一は実務的では無かった。
だからこそ、メールの内容は勤めて事務的にしたのだ。
香織に送る文面は何時も短い。
しかし、何度も何度も送る前に推敲した。
時には愛の告白に近い言葉を並べてみたくもなった。
けれど・・・・
次に会う時こそ、香織に総てをぶつける積りでいた。
だから、それまでは甘い囁きを封印する積りでいたのだ。
台風のシーズンが終われば、北海道には滅多に北上しない台風の代わりに香織に会いに行こう・・・
そして香織にこの想いをぶつけよう・・・
香織、愛してる・・・・僕と一緒になろう と・・・
優一の決意に添わず、この年は九州に上陸する台風は多かった。
その多くは沖縄・九州に上陸した後日本海を抜けるか、たまに迷走して関東に再上陸した。
その為、優一が熊本を離れる事は中々難しかったのだ。
月日は既に10月も半ばとなっている。
香織とのメールはその後も一日も欠かさず続いていた。
2008年10月16日 19:48
件名:こんばんは♪(^_-)-☆
『こんばんは♪もうお食事済みました?こちらは今日、今年初めての雪が降りました。
積もるような雪じゃないけど。 だからすごく寒くて、鮭とブロッコリーでクリームシチューを作ったのよ♪(^_-)-☆ お昼の時に小鉢に入れてランチにお付けしたら皆美味しいって♪ 古畑さんなんか三杯もお代りしちゃって。
優一さんに食べさせてあげたいなァ~(/_;)・・・・』
2008年10月16日 20:08
件名:reこんばんは♪(^_-)-☆
「こんばんは♪(^^)/ 鮭とブロッコリーのクリームシチュー?エエなァ~~!(ToT)/~~~
古畑の奴、食べさせんでエエねん!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
早く香織さんのシチューが食べたいよォ~!(>_<)
こっちもだいぶ寒くなって来たなァ・・・雪はまだやけど、熊本市内と違って、やっぱり山間部は冷える。」
2008年10月16日 20:19
件名:rereこんばんは♪(^_-)-☆
『うふふふ♪(^_-)-☆ そう言うと思った♪ でも、まだそちら、離れられないんでしょ?
今年は台風が多いものねぇ(/_;)・・・・・
もう少し近ければ、シチューのお鍋持って行くのに・・・』
2008年10月16日 20:37
件名:rerereこんばんは♪(^_-)-☆
「そうなんや、今年は台風の当たり年やなァ・・・
来週の週末、大阪には帰るんやけどな、月曜火曜が本社で会議の予定やから(/_;)・・・・」
2008年10月16日 20:50
件名:rererereこんばんは♪(^_-)-☆
『来週末大阪まではいらっしゃるの? 私も行こうかな?
金曜日午後から出れば、何とかその日の内には大阪に着くし♪(#^.^#)』
2008年10月16日 21:10
件名:rererereこんばんは♪(^_-)-☆
作品名:夢の途中9 (270-306) 作家名:ef (エフ)