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愛と苦しみの果てに

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 洋介は今一通の招待状を読み、胸を熱くしている。
 それは啓太から突然に送られてきたもの。
 啓太の二十五歳になる娘・優香が結婚すると言う。 
 だから、その披露宴に出席して欲しいとのこと。

 二歳となった幼い優香を、そっと抱いたのは二十三年前のことだった。
 あれから現在に至るまで、啓太夫妻とは音信不通だった。それは、洋介自らがあらゆる関わりと連絡を絶ってきたからだ。

 今、その長い歳月の流れの後に、一通の招待状が洋介の手元に届いた。洋介はそれをぎゅっと握りしめている。 
 そして、あの過(あやま)ちから始まった愛と苦しみの日々が走馬燈のように蘇ってくるのだった。
 招待状には、ぜひ優香の花嫁姿を見てやって欲しいと書かれてある。洋介はもう涙が止まらない。

「Yosuke, are you all right ?  Are you crying, now ?」
(ヨースケ、大丈夫ですか? 今、泣いているのですか?)
 秘書のスザンヌが心配そうに聞いてきた。

「I am OK.  I should go for a walk.   I will be back soon.」
(大丈夫、ちょっと、散歩に出掛けてきます、すぐ戻ってくるから)
 洋介は秘書にそう伝え、海岸沿いにあるオフィスを飛び出した。


作品名:愛と苦しみの果てに 作家名:鮎風 遊