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ef (エフ)
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夢の途中8 (248-269)

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「ああ、そうだ、虞美人草だ・・・俺は学(がく)が無ぇから知らなかったが、古い中国の話で虞氏と云う美女が死んだ後、その墓に毎年咲く花を虞美人草と云うんだそうだな・・・」
      

 垓下歌 項籍(項羽)

     力抜山兮氣蓋世   
  時不利兮騅不逝
  騅不逝兮可奈何
     虞兮虞兮奈若何
  
 
       垓下(がいか)の歌

『私には、まだ、山を引き抜くほど力があり、私の気概はこの世を覆うばかり。
だが、時勢は私に不利であり、愛馬「騅(すい )」も動こうとしない。 
動こうとしない「騅」をどうしたらよいだろうか。
愛する妻「虞(ぐ)」よ、お前をどうしたらよいだろうか。』

漢の高祖(劉邦)と天下を争った一代の英雄項羽が、高祖の軍に追われて垓下(安徽省)に立てこもったある一夜、高祖軍の中から楚(項羽の故国)の歌声が聞こえた。そのむせび泣くような歌声に、項羽はいよいよ自分の故国は破れたかと感じた。(四面楚歌)
項羽は最後の酒宴を開き、席上「虞や虞やなんじをいかにせん」と詩を吟じた。項羽の愛人である「虞」がその詩にあわせて舞を舞うのを見た後、項羽は愛馬「騅」をかって高祖の軍陣に突入し、悽愴な戦いの後、31歳の若さでこの世を去った。
「虞」も垓下で自害した。その年の夏、「虞」を葬った塚に真っ赤な罌粟(けし)の花が咲いたが、地元の人たちは、自ら命を絶った「虞」を哀れんで、この花を「虞美人草」と名付けたという。



「アノ花はよォ、母ちゃんが丹精込めて育てた畑が、
母ちゃんの最後の望みを聞いて咲かせてくれたんだ・・・
普通ひなげしの花は此処じゃ早くても5月の中旬にならねえと咲かないからなァ・・
今年も咲いたろ、虞美人草? 
母ちゃんが死んだ年から、何時もなら5月にしか咲かない虞美人草が、母ちゃんの命日の4月20日には必ず一輪か二輪、それも決まって真っ赤な虞美人草が咲くようになったのさ・・・

そんな絶世の美女に例える程ベッピンじゃ無かったが、
今、この俺がこうして在るのも、皆母ちゃんのお陰さ・・・
ま、俺はこの通りガサツな男でよォ、母ちゃんが生きてる時は何時もアッチでフラフラ、コッチでフラフラしてて、何べんも泣かせたモンよ・・・
分かってたんだがなァ~、母ちゃんの有難味を・・・
俺の蔭に成り日向に成りよォ~~、俺を男として咲かせてくれたと思ってるんだ・・・
でもとうとう〈有難う〉のひと言も、口に出して云う事は出来なかったなァ・・・
今更そんな事言ったって、遅いよなァ、ったくぅ~~・・・
でもなァ、こうやって母ちゃんと育てて来たラベンダーを観ていると、俺はいつの間にか母ちゃんと話ししてるんだ・・・
観ていると、聞こえて来るんだよ・・・母ちゃんの声が・・・・
ママも、亡くなった旦那さん、夢に出て来たりしねぇか?」
『・・・そうね、昔はそんな事も在ったわ・・・でも、何も話さず、寂しい顔だけして消えて行ったわ・・・私だけ残して、って恨んでもいたわ・・』
「俺よォ、和子さんからママの事は粗方(あらかた)聞いてたんだぜ? 神戸で辛い事が在ってこっちに来たんだって・・・」
『・・・そうなんだァ・・・熊田さん、そんな事ひと言も云わなかったわね・・・』
「そんな事、云うかよォ・・・何時かママの口から聞ける日があるなら別だと思っていたが・・・とうとうそんな日は訪れ無かったてことさ♪」

「ママが関西に帰るって聞いて、俺はびっくりしたんだ。
あんな辛い目にあった関西に帰るとは思わなかったからな・・・
だけど、帰ろうと思わせた野郎が居る・・・
そう思わせたのは、あの夢島建設の林って野郎だろ? 
良いよ、今更、隠さなくったって^^;・・・
アイツがこの藤野に来てから、ママ、アンタは変わっよ・・・
イヤ、悪い意味じゃないぜ?  
傍目から見れば何時も明るくて、人あしらいの上手い女に見えるだろうが、俺は和子さんから聞いてる所為もあって、アンタがずっと無理してたって思ってた・・
この、誰も知らない土地で骨を埋めるために一生懸命溶け込もうとしてる姿が俺には痛々しかった・・・
でもよォ、アイツが来てからアンタの笑顔は本物になった・・・
心底、楽しそうに笑ってた・・・
ママ、アイツの事、好きなんだろ? アイツもママの事が好きだぜ♪
賭けても良い♪(^。^)y-.。o○」

「この前なァ、夢島の工事現場の前通ったから、暫く現場見てたんだよ。
なかなか良い仕事してるぜ、夢島は♪ちゃんと指図の声がはっきり聞こえてよォ、
資材の現場に余計なモノは木片(きれっぱし)一つ落ちてねぇ♪
鍬入れの頃はこっちでも珍しい長雨で、工事の進み具合が心配だったが、今じゃそれを盛り返してお釣りが来る位捗ってるって話じゃねぇか♪
アイツが直接現場で指示してねえのは承知の上だが、
アノ、小さい男・・・
何だっけ?そう、古畑任三郎? ・・・^^;じゃなくて、古畑徹か?
アイツを育てたのは林の野郎だろ?それが大したモンだって云う事よ(^。^)y-.。o○
大して偉ぶらず、人がちゃんと付いて来るってのは、野郎にそれだけの器量が備わってる証拠よォ。
あいつならママを任せても大丈夫だと俺は思ってる(――゛)・・・」

『・・・(*_*)  熊田さん・・・・・・』
「アイツ、今、熊本なんだって?どうだい、いっそ追いかけていっちゃァ?(^。^)y-.。o○」
『・・・(*_*;  それは出来ないわ・・・
もし、私達にご縁があれば、きっとまた会えると思うし・・・』
「なんでぇ、じれってぇなァ~!(ーー゛) 俺はママに幸せなって欲しいと心から願ってるんだ! 
俺じゃ・・・ダメだからよォ・・・(/_;)・・・
林の野郎ならきっとママを幸せにしてくれると思うから、
俺は・・・」
『・・・熊田さん、有難う<(_ _)> 神戸でも同じ事を言われたわ・・・
うん、私きっと幸せになる♪(^_-)-☆ 』

もう香織の心に迷いは無かった♪



香織が熊田ファームから帰ったのはもう夜の11時近かった。
優一からメールは無いかとパソコンを開くと、

2008年8月21日 21:09
件名:今晩わ♪
「香織さん、今晩わ♪ もう今日から店開きしてたんやな。どうですか、何時もの常連さん来てくれたか?  僕も、香織さんの淹れたアメリカン、飲みたかったわ・・・
9月になったら、一旦藤野に帰ろうと思います。
ほな、オヤスミ♪」

優一はくだけた関西弁を文字にして送って来た。
神戸で過ごしたあの時間、優一はすっかり関西人に返り、関西弁で通した。
香織は未だ照れと云うのか、美羽や姪っ子達の前でしか関西弁を使えなかった。
別に気取っている訳では無いのに、不思議であった。

2008年8月21日23:10
件名:re今晩わ♪
「こんばんわ♪メールありがとうございます。 
初日から常連さんに囲まれて幸せです♪ 
古畑さんも来てくれましたよ♪