夢の途中7 (216-247)
意識の無い香織は程無く駆け付けた救急車に乗せられ、美羽と共に斑鳩医大病院に搬送された。
香織は低体温症に陥り、後に肺炎を罹っていた。
香織が美羽の社宅を出て発見されるまで約12時間、火の気の無い部屋の中で香織は倒れていたのだ。
長時間冷気に曝され、香織の体温は33度近くまで低下していた。
もう1時間発見が遅れていたら危なかったと医師に言われた。
後に、事件性が無いか警察の事情聴取も行われた。
しかし意識を失い、今度は高熱にうなされる香織に事情聴取は不可能だった。
結果事件性は無く、香織が何だかの理由で意識を失い、低温の部屋の中で長時間居た為と結論づけられた。
香織はその後丸二日、意識を失っていた・・・
香織は夢を見ていた。
後ろ姿の孝則と後ろ姿の美智子が、半ズボン姿の男の子を間に連れて、歩いている・・・
時々香織の方を孝則は振り返ったが、悪びれることなく男の子の手を引いていた・・
美智子も顔一杯の穏やかな笑顔を溢れさせ、香織の存在など気にする様子も無く、男の子の手を引いて、香織から遠ざかって行った・・・
香織と孝則等三人の間には、いつの間にか小さな川が流れ、その川幅が次第に大きく広がって行く・・・
三人の姿も次第に小さくなり、いつの間にか孝則の姿は消え、それでも美智子と男の子は何事も無かったように、楽しげに語り合い歩き続け、やがて・・・消えた・・・・
香織が目覚めた時、目の前に美羽の顔が在った。
「お姉ちゃん、分かるか?・・・・」
『・・・美羽・・ちゃん?・・・・此処、どこ?・・・』
香織は虚ろな眼差しを美羽に向けながらも、しっかりとした口調で話した。
「・・・お姉ちゃん、此処、病院やがな!・・・」
『・・・?病院?て・・・誰か・・・・病気?・・・』
「誰て・・・・お姉ちゃん、三日前、ウチの社宅から晩に帰ってそのまま部屋の中で倒れてたんよ? それで、肺炎と低体温症に罹ってしもて・・・あと一時間発見が遅れてたら、命無かったて御医者さんが・・・・・わぁ~~~~~~~~~~!」
美羽はほっとした気持ちの反動で、香織のベッドの傍に坐り込んで泣きだした・・・
香織はその後5日間入院し、流石に一人暮らしはさせられないと、社宅の二階の一室をあてがわれ、美羽親子と五人で暮らし始めた。
あの日、美智子の電話にショックを受けた香織はその場に泣き崩れ、とうとう意識が無くなるまで泣き続けての事故だったのだ。
薄れゆく意識の中で、こんな事なら死んでしまいたいと思った事も確かだった・・・
美羽に美智子から来た電話の事は話さなかった。
孝則が残した結果がおぞましくも在り、それでもまだ孝則を庇う気持ちも在ったからだ・・・
美羽は孝則の事を良い義兄だと信じているだろうし・・
香織は考え抜いた結果、今は北海道で喫茶店を夫と営む北村和子に話をしてみようと思った。
和子は孝則と香織を引き合わせた人物であり、横浜から神戸に逃避行した際に木島医院を紹介してくれたのも和子であった。
相談相手は木島でも良かったのであろうが、神戸に居た時散々世話になった木島にこれ以上の負担を掛けたくないとの思いも在った。
しかし、北海道に尋ねて行くほど身体が本調子では無いし、第一、美羽が【万が一の事】を慮って、旅に出る事を了承するとは思えなかった。
香織は一目和子に会って、心の中のもやもやを吐き出したいと想い、ひとまず自分の体力のを整える事に注力したのだった。
香織が体調を戻し、和子に会う為北海道に行ったのはそれから凡そ3カ月後の事であった。
「香織さん、もう来ていたんだね♪(^^)/」
気が付くと、白いポロシャツにベージュのコットンパンツを履いた優一が立っていた。
『あ、林さん♪(#^.^#)』香織は阪急梅田駅の改札の前で、ソフィアローレン主演の古いイタリア映画を想い浮かべていて、近づいて来た優一に気付かないでいたのだ。
「まだ、12時20分前ですよ?相当前に着いたのかな?」
『ええ、久しぶりの大阪でしょ?要領が分からなくて、つい早めに♪(#^.^#) 』
「じゃあ、少し早いけど、行きましょうか? お昼はステーキで良いですか?」
『ええ、お任せしますわ♪(#^.^#)』
優一は待ち合わせの場所から程近い、浪速ホテルの地下にある【ステーキハウス目黒】に香織を案内した。大阪駅から浪速ホテルまで地下道で行けるので、酷暑の日差しを香織に浴びせる事は無かった。
「こんにちは♪ (^_^)/ 」
[あ、林様、お待ちしておりました♪<(_ _)>]
店に入ると、貫禄あるシェフ姿の目黒が出迎えてくれた。此処は6月にも娘の由美と食事いた馴染みの店だった。
店内は夏休み中の週末の土曜日とあって、結構混雑している。
二人は店員に、【予約席】のプレートが掛けられたカウンター席に案内され坐った。
目の前にはピカピカに手入れされた大きな鉄板が在り、鉄板の向こうに先ほど優一達を迎えたオーナーシェフの目黒が再び現れた。
[林様、暫くぶりで♪(^v^) 北海道は如何ですか? こっちより涼しいでしょ?]
「ああ、こっちの暑さは殺人的やね~!(@_@;) 向こうも7月の初めは雨ばっかりで往生したけど、半ばから雨も上がって、工事も順調に進んでるわ♪(^。^)y-.。o○
そやさかい、現場は若いモンに任せて、僕は今専ら営業さんと同行して北海道中を走り回ってんねん♪^^;・・・
ああ、目黒さんに紹介しとくわ、僕が北海道でお世話になってる喫茶店のママさんで、花田香織さんや♪チョンガー(独身)の僕の侘しい食生活を強力にサポートしてくれる女神みたいなお人やで♪(^。^)y-.。o○
香織さん、ここは昔からの僕の馴染みの店で、こちらがオーナーの目黒さんです。」
『花田と申します。<(_ _)>』
香織は席からすっと立ち上がり、目黒に深々とお辞儀をした。
[あああ、滅相も無い!ご丁寧に有難う御座います。此処の主人で目黒と申します。
どうぞ、宜しゅうに<(_ _)>]目黒も慌てて深々と礼をした。
[林さん、えらいベッピンさんだんなぁ~♪ ^m^ ]
「ああ、そやろ? 僕も朴念仁や無いトコ、見せトコ思てなぁ♪(^_^)/ 」
優一はすっかり関西弁で目黒とやり取りし始めた。
目黒は冷蔵庫から大きな肉の塊を二つ取り出し、二人に見せた。
[これがA5ランクの淡路牛ですわ♪ こちらがサーロイン、こちらがヘレです。
神戸牛よりサシは少ないですが、大事に育てられた肉やから味わい深いですわ♪
名前も【あじわい牛】て云いますねん♪今日の私のイチオシです♪(^^)v]
「ほう、うまそうやなぁ~♪香織さん、どっちが宜しい?僕はヘレにしよかな?」
[林さん、ヘレ云うても通じまへんやろ?(――゛)
名古屋から東の人にはフィレ、って云わんと♪(^。^)y-.。o○]
「あ?^^;・・・・・・」優一は香織と目を合わせて苦笑した。
『・・・・実は私、元々大阪出身ですの♪(#^.^#) お二人の関西弁聞いていたら、つい釣られそうにそうになっちゃうわ♪(*^。^*) 』
[ああ、元々こちらの御人ですか?そしたらヘレ、で宜しいわなぁ~♪^^;・・]
香織は低体温症に陥り、後に肺炎を罹っていた。
香織が美羽の社宅を出て発見されるまで約12時間、火の気の無い部屋の中で香織は倒れていたのだ。
長時間冷気に曝され、香織の体温は33度近くまで低下していた。
もう1時間発見が遅れていたら危なかったと医師に言われた。
後に、事件性が無いか警察の事情聴取も行われた。
しかし意識を失い、今度は高熱にうなされる香織に事情聴取は不可能だった。
結果事件性は無く、香織が何だかの理由で意識を失い、低温の部屋の中で長時間居た為と結論づけられた。
香織はその後丸二日、意識を失っていた・・・
香織は夢を見ていた。
後ろ姿の孝則と後ろ姿の美智子が、半ズボン姿の男の子を間に連れて、歩いている・・・
時々香織の方を孝則は振り返ったが、悪びれることなく男の子の手を引いていた・・
美智子も顔一杯の穏やかな笑顔を溢れさせ、香織の存在など気にする様子も無く、男の子の手を引いて、香織から遠ざかって行った・・・
香織と孝則等三人の間には、いつの間にか小さな川が流れ、その川幅が次第に大きく広がって行く・・・
三人の姿も次第に小さくなり、いつの間にか孝則の姿は消え、それでも美智子と男の子は何事も無かったように、楽しげに語り合い歩き続け、やがて・・・消えた・・・・
香織が目覚めた時、目の前に美羽の顔が在った。
「お姉ちゃん、分かるか?・・・・」
『・・・美羽・・ちゃん?・・・・此処、どこ?・・・』
香織は虚ろな眼差しを美羽に向けながらも、しっかりとした口調で話した。
「・・・お姉ちゃん、此処、病院やがな!・・・」
『・・・?病院?て・・・誰か・・・・病気?・・・』
「誰て・・・・お姉ちゃん、三日前、ウチの社宅から晩に帰ってそのまま部屋の中で倒れてたんよ? それで、肺炎と低体温症に罹ってしもて・・・あと一時間発見が遅れてたら、命無かったて御医者さんが・・・・・わぁ~~~~~~~~~~!」
美羽はほっとした気持ちの反動で、香織のベッドの傍に坐り込んで泣きだした・・・
香織はその後5日間入院し、流石に一人暮らしはさせられないと、社宅の二階の一室をあてがわれ、美羽親子と五人で暮らし始めた。
あの日、美智子の電話にショックを受けた香織はその場に泣き崩れ、とうとう意識が無くなるまで泣き続けての事故だったのだ。
薄れゆく意識の中で、こんな事なら死んでしまいたいと思った事も確かだった・・・
美羽に美智子から来た電話の事は話さなかった。
孝則が残した結果がおぞましくも在り、それでもまだ孝則を庇う気持ちも在ったからだ・・・
美羽は孝則の事を良い義兄だと信じているだろうし・・
香織は考え抜いた結果、今は北海道で喫茶店を夫と営む北村和子に話をしてみようと思った。
和子は孝則と香織を引き合わせた人物であり、横浜から神戸に逃避行した際に木島医院を紹介してくれたのも和子であった。
相談相手は木島でも良かったのであろうが、神戸に居た時散々世話になった木島にこれ以上の負担を掛けたくないとの思いも在った。
しかし、北海道に尋ねて行くほど身体が本調子では無いし、第一、美羽が【万が一の事】を慮って、旅に出る事を了承するとは思えなかった。
香織は一目和子に会って、心の中のもやもやを吐き出したいと想い、ひとまず自分の体力のを整える事に注力したのだった。
香織が体調を戻し、和子に会う為北海道に行ったのはそれから凡そ3カ月後の事であった。
「香織さん、もう来ていたんだね♪(^^)/」
気が付くと、白いポロシャツにベージュのコットンパンツを履いた優一が立っていた。
『あ、林さん♪(#^.^#)』香織は阪急梅田駅の改札の前で、ソフィアローレン主演の古いイタリア映画を想い浮かべていて、近づいて来た優一に気付かないでいたのだ。
「まだ、12時20分前ですよ?相当前に着いたのかな?」
『ええ、久しぶりの大阪でしょ?要領が分からなくて、つい早めに♪(#^.^#) 』
「じゃあ、少し早いけど、行きましょうか? お昼はステーキで良いですか?」
『ええ、お任せしますわ♪(#^.^#)』
優一は待ち合わせの場所から程近い、浪速ホテルの地下にある【ステーキハウス目黒】に香織を案内した。大阪駅から浪速ホテルまで地下道で行けるので、酷暑の日差しを香織に浴びせる事は無かった。
「こんにちは♪ (^_^)/ 」
[あ、林様、お待ちしておりました♪<(_ _)>]
店に入ると、貫禄あるシェフ姿の目黒が出迎えてくれた。此処は6月にも娘の由美と食事いた馴染みの店だった。
店内は夏休み中の週末の土曜日とあって、結構混雑している。
二人は店員に、【予約席】のプレートが掛けられたカウンター席に案内され坐った。
目の前にはピカピカに手入れされた大きな鉄板が在り、鉄板の向こうに先ほど優一達を迎えたオーナーシェフの目黒が再び現れた。
[林様、暫くぶりで♪(^v^) 北海道は如何ですか? こっちより涼しいでしょ?]
「ああ、こっちの暑さは殺人的やね~!(@_@;) 向こうも7月の初めは雨ばっかりで往生したけど、半ばから雨も上がって、工事も順調に進んでるわ♪(^。^)y-.。o○
そやさかい、現場は若いモンに任せて、僕は今専ら営業さんと同行して北海道中を走り回ってんねん♪^^;・・・
ああ、目黒さんに紹介しとくわ、僕が北海道でお世話になってる喫茶店のママさんで、花田香織さんや♪チョンガー(独身)の僕の侘しい食生活を強力にサポートしてくれる女神みたいなお人やで♪(^。^)y-.。o○
香織さん、ここは昔からの僕の馴染みの店で、こちらがオーナーの目黒さんです。」
『花田と申します。<(_ _)>』
香織は席からすっと立ち上がり、目黒に深々とお辞儀をした。
[あああ、滅相も無い!ご丁寧に有難う御座います。此処の主人で目黒と申します。
どうぞ、宜しゅうに<(_ _)>]目黒も慌てて深々と礼をした。
[林さん、えらいベッピンさんだんなぁ~♪ ^m^ ]
「ああ、そやろ? 僕も朴念仁や無いトコ、見せトコ思てなぁ♪(^_^)/ 」
優一はすっかり関西弁で目黒とやり取りし始めた。
目黒は冷蔵庫から大きな肉の塊を二つ取り出し、二人に見せた。
[これがA5ランクの淡路牛ですわ♪ こちらがサーロイン、こちらがヘレです。
神戸牛よりサシは少ないですが、大事に育てられた肉やから味わい深いですわ♪
名前も【あじわい牛】て云いますねん♪今日の私のイチオシです♪(^^)v]
「ほう、うまそうやなぁ~♪香織さん、どっちが宜しい?僕はヘレにしよかな?」
[林さん、ヘレ云うても通じまへんやろ?(――゛)
名古屋から東の人にはフィレ、って云わんと♪(^。^)y-.。o○]
「あ?^^;・・・・・・」優一は香織と目を合わせて苦笑した。
『・・・・実は私、元々大阪出身ですの♪(#^.^#) お二人の関西弁聞いていたら、つい釣られそうにそうになっちゃうわ♪(*^。^*) 』
[ああ、元々こちらの御人ですか?そしたらヘレ、で宜しいわなぁ~♪^^;・・]
作品名:夢の途中7 (216-247) 作家名:ef (エフ)