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名探偵カラス Ⅲ

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 それからの数日間、俺は、自称ヒロと名乗るその警官を、朝から晩までびっちり尾行した。アイツに罰を与えるためには、まずアイツの動向を探る必要があったからだ。そうする内に、アイツが毎日決まった時間に、決まった順路を自転車で巡回することが分かった。
「これは使える!」
 そう踏んだ俺は、そのコースに沿った彼への制裁計画を練り上げた。
 無論、俺一人では無理なので、仲間のカラス(以前にも多大な協力をしてもらっている)や、極悪金融の事務所に住んでいたチュータにも応援を要請することにした。
 
 チュータの自宅は、今では居酒屋チェーンの店へと姿を変え、そのお陰で食べ物には不自由しないと自慢気に語る。
「以前、チュータも俺に協力してくれたから、ある意味それは神様からのご褒美かも知れないぞ!」
 俺がちょっと恩着せがましくそう言うと、チュータは恭〔うやうや〕しく答えた。
「うん、ぼくもそう思いまチュー。だからまた何か協力できることがあったら、いつでも遠慮なく言って!」
 チュータは最敬礼でもしそうな勢いでそう言った。
 この機を逃(のが)す手はない! と言うより、実際は、チュータがそう言うのを待っていた俺は、すかさず言った。
「そうか、じゃあ早速頼みたいことがあるんだけど……」
 俺の言葉に、チュータは目を丸くした。
 しかし、この状況で断ることはできないだろう。
「えっ! そうなの……で、その頼みというのは?」
 チュータは俺の言葉を不安げな面持ちで待っている。
「その頼みというのは、実は……」
 俺がまず、これまでの経緯(いきさつ)をざっと話してやると、チュータはびっくりしたようだった。
「そんな酷い奴がいるんだっ! そりゃあ許せないよねぇ。それでどんな罰を与えるの?」
「それなんだけどさあ、奴は毎日巡回に回るんだ。だからその時に――」
 ――俺が細かく計画を話すと、
「そりゃあダメだよ! いくら悪い奴でも、そこまでやったらやり過ぎだよ! いくらカァーくんが神様の使いでも、そんなこと神様が許されるはずがない。それだけは止めて。そんなことしたらカァーくんだってタダじゃあ済まされないよ」
「……そりゃあ分かってるよ、俺だって。しかし、こうするしかないんだ。そうしないと、きっとまた新たな被害者が出るに決まってる! アイツは警官という仮面を付けた悪魔なんだから!」
 俺がそう言ってしつこく頼むと、チュータもとうとう根負けして、渋々了解してくれた。
「ぼくも、神様からの罰を受けるんだろうなぁ……」
 ボソッとチュータがそう呟いたから、俺は、そんなことには絶対ならないようにするからと、固く約束した。

 チュータとの約束を取り付けた俺は、次にはカラスの仲間たちに会いに出かけた。彼らは気まぐれだから、どこにいるやら分からない。どこと言って当てもないまま、仕方なく町中を飛び回って、ようやく公園のそばの電柱の上に並んで止まっている所を見つけた。
 彼らとの交渉はとっても楽だった。
 彼らには善悪を区別する心なんて最初からないし、普段でも人間から虐めを受けているから、俺の応援要請には快く応じてくれた。楽しみにしている言ってもいいくらいだ。
 よし、これで準備はできたぞ! あとは、決行する日を決めるだけだ。

 ちょうどその頃、真由美さんは警察に証拠の品を持って出向いていたようだったが、俺がそのことを知ったのは、その日の夜のことだった。できることなら、そんなことはさせたくなかったのに、手遅れだった。
 俺が夜真由美さんのうちで聞いた話では、真由美さんは本署に証拠品と今回の手紙を持つて、犯人を捕まえて欲しいと訴えたらしいんだが、事情を聞いてくれた担当の警察官は、一通りお決まりのことを言ってその証拠品を預かると、これから捜査しますので、今日はお引取り下さいと言われたようだ。
 そんなことで、本当に犯人を捕まえてくれるんだろうか? と、真由美さんは不安に思っているようだった。
 結構、厭らしいことについても色々聞かれたみたいで、とても恥かしかったと言っていた。
 あ、誤解のないように言っておくけど、これは、俺と真由美さんが会話をしたわけじゃないんだ。いくら何でも、真由美さんは俺の言葉は分からないからさ。
 でも、あれからというものどういうわけか、俺が行くと真由美さんは、俺を相手に色んな出来事を喋るようになったんだ。今回の事件のことについては特に……、心の中に隠しておくのが辛かったのかも知れないなぁ、と俺は思う。
 まあ、この件に関しては、そうそう他人に喋れることでもないし、俺に話す分には他人に漏れることもない。そう思って安心していたのかも知れない。
 兎も角も、持って行った先があの交番でなくて良かった! もし、アイツのいる交番に持って行ってたら、どんなことになっただろうか?
 奴は、真由美さんが警察に訴えるとは思っていないだろうから、その思いが裏切られたと知ったら……。
 ――想像するだけでも空恐ろしい。
 しかし、警察が捜査を始めたとしたら、急がなくてはならない。アイツがその犯人であることは、遅かれ早かれ分かるだろう。その時、警察がどうするかだ。捜査の過程でアイツがそれに気付いたら、間違いなく真由美さんを逆恨みするだろう。そうなる前に、アイツに罰を与えなくては……。
 世間に、アイツが真由美さんにしたことがバレる前に……。
作品名:名探偵カラス Ⅲ 作家名:ゆうか♪