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名探偵カラス Ⅲ

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 その日、俺が山寺のポーの所に遊びに行っている時のことだった。
 俺とポーとの話題はやはり何と言ってもホワイティのことが一番多い。
 ましてこの前の事件も解決していないし……。
「ねぇ、カァーくん。真由美さんを襲った犯人はその後どうしたの? 何か分かったのかい?」
 まだポーにも手紙や写真が届いたことは話していない。
 しかし、何かの時には力を借りることもあるかも知れないし、やはり話しておくか……。俺がちょうどそう考えた時、すぐそばで羽音がした。
 バサバサバサ! 
 振り返って驚いた。
「ホワイティ!」 
 俺とポーの声が重なる。
「どうして? 大丈夫なのかっ?」 と俺が尋ね。
「飛べるようになったんだね! 良かった」 とポーが声を弾ませた。
「二人とも、心配掛けてごめんなさい。今朝方からようやく羽ばたいても平気になったから、私が鳴いたら、真由美さんが気付いて『少し散歩してらっしゃい』って出してくれたの。だから何を差し置いてもあなた達に元気になったところを見せようと思って……ふふっ」
「そうか、それはありがとう。本当に良かった。だけど……」
「ん? だけど…って?」
 俺の言葉尻を捉えて、ポーが不思議そうに尋ねた。
「――うん。実は、ホワイティの体調も良くなかったから、今までは敢えて黙ってたんだけど……」
 それでもやっぱり少し迷って俺が口籠もると、ポーが聞いてきた。
「どうしたんだよ。何か心配事かい?」 と。
 ホワイティも不安気に首を傾げて俺を見ている。
『やはり話しておいた方が良いなっ』
 そう決心すると、二人の顔をじっと見つめて話し始めた。
「実は、この前ホワイティを送って行った時、とんでもない物を見てしまったんだ」
「とんでもない物?」 
 ポーが驚いた顔で俺を見る。
「うん。――」 
 俺はあの時のことを見たままに順を追って話して聞かせた。
「――まさか! そんな……」
 ポーが、あり得ないと言った表情で驚きの声を発すると、その言葉を補うようにホワイティが震えながら言った。
「そ、そんな酷いこと。……酷過ぎるわ!」
「そうなんだ。あまりにも酷過ぎる話だと俺も思う」
「何とかならないのか!」 
 さすがのポーも憤慨しているようだ。
「カァーくん、お願い!」 
 ホワイティは真剣な顔で、祈るように俺を見る。
「うーーん。俺も何とかしたい。だがまだ名案が浮かばないんだ。でも、だからこそ毎日行って様子を見てるんだ」
「あっ、それで毎日来てくれてたのね。てっきり私に……」
 言いかけてホワイティは頬を赤く染め、それ以上は口を閉ざしてしまった。
『私に会いに来てくれているのかと思ってた』 
 そう言いたかったんだろうか?
 俺は彼女に確かめたいと思ったが、一応ポーがそばにいることだし、敢えて素知らぬ振りをした。
 すると、ホワイティと俺の顔を見比べていたポーが言った。
「カァーくん、毎日ホワイティに会いに行ってたんだぁ。ふぅーーん」
「えっ、い、いや、だから、俺は真由美さんのことが心配で……」
 そう言いながら俺は、正直痛いところを突かれ、内心ドギマギしていた。
 だから話を逸らすためにと、一計を案じてこう言った。
「だから、そのことで君たちにも一応協力して貰いたいんだ。もちろん危ないことをして貰うつもりはないから安心して」
「えっ! 僕に何かできることでもあるのかい? あるんだったら何でも言ってよ」 
 ポーが珍しく怖気づかないで言ってくれた。
「――私は何をしたらいいのかしら?」 
 ホワイティはやはり不安そうだ。
 無理もない。ホワイティは一度犯人に酷い目に合わされているんだから。
「大丈夫。安心して! ポーには必要に応じてお願いするから、それを聞いてくれればいいし、ホワイティは、もしまた犯人が来た時には、以前みたいにやっつけようとは思わないで、極力逃げて。でないとまた傷付けられてもいけないからさっ」
「分かった。いつでも言ってくれ」
「私も分かったわ。でも本当にそれでいいの?」
「うん!」 
 俺は二人を見つめ、力強く頷いて見せた。


 ――そして夕方になり、俺はホワイティを送って行き、そのまま真由美さんの家にいる時のこと。
 もちろん真由美さんは俺を部屋に入れてくれて、少しばかりだが餌代わりにとでも思ったのだろう。食べ残しのおかずを皿に載せて俺の目の前に置いてくれた。もちろん俺は遠慮なく頂いた。
「あー、旨かった!」 
 ご馳走様と言う意味で、俺が「カァー」と一声鳴いたその時、玄関のチャイムが鳴った。
 もしや……。俺は一瞬身を固くした。

作品名:名探偵カラス Ⅲ 作家名:ゆうか♪