声
稲葉が睨みながら僕の服を掴んだ。――しかし、すぐさま稲葉は僕の服を離し、力なく倒れた。稲葉の腹にはナイフが刺さっていた。それは袖に隠していたナイフだった。
――いい気味だ。僕は可笑しくて、可笑しくて、声に出して笑った。稲葉は暴れていたが、やがて絶命した。すぐさま、改造拳銃を四方八方にばらまく。
そこで誰かの悲鳴が聞こえた――。
――そこからの事はよく覚えて居ない。
一面が血の海になっていた。全部、僕がやったらしい。目の前は真っ暗で外からサイレンの音が聞こえた。
――次に気がついた時、僕は四方の壁が白い部屋で目を覚ました。自分の服を見ると白い検査着を着ていた。
「臨時ニュースをお伝えします」
抑揚の無い、ニュースキャスターの声が響く。
「今日九時ごろ、東京某所の○○高校で少年Aが、意味不明な言葉を叫びながら、クラスメイト三十五人を殺害すると言う事件が有りました。現在警察はこの少年がなぜこの様な凶行を行ったのか調査を行っています。なお、今日は○○大学で犯罪心理学を研究している、南条教授にコメントをいただきたいと思います」
「最近の十代はキレやすいと言いますからね」
「日本も物騒になったもんだな――ま、俺にゃ関係無いな」
コーヒーを啜り、誰かはテレビを消した。
了