日のあたる場所へ
公園について、辺りをみわたすとベンチに人影を発見した。
あのダラダラの前髪にじつはデカイくせに猫背のせいで低く見える奴には見覚えがある。日影だ。
「目立たないつっても、シャンとしたらじつはすっげーイケメンなのになぁ…」
ぽつりと呟きながら遠くから日影にに歩み寄っていこうとした時。日影のそばにコロコロボールが転がってきて、子供が走って取りに来た。その子供に微笑みながらボールを渡している日影。ほら、やっぱり可愛いんだよアイツは。
じつは優しいとことか、結構寂しがりやなとことか。オレ、アイツに惚れてたんだ。
男同士とか、どうでもいい。ただオレは日影が好き。ただそれだけだ。
深呼吸して日影に寄って行く。大丈夫。日影に拒絶されたら嘘だよって、いつもみたいに笑えば良いんだ。
「…ッ…日影。」
「!…太陽、さん……」
驚いてこっちを振り返った日影に顔には涙の痕があった。
泣いたんだな。俺らに嫌われたと思ってないたのか。なんだか日影には悪いけど、嬉しくなっちゃうな。
「ほら日影。オレそばに来たぜ?ちゃんと日影のそばにいるぞ?」
「ッ…でも、おれ……ゥッ、」
「おいおい、なんで泣くんだよ?…オレちゃんと…日影を見つけた。」
見つけた。その言葉に泣いていた日影の瞳が開かれた。
大丈夫。今なら言える。
「…日影、オレさ。すっごく大事な奴が出来たんだ。」
「………なんで俺にそんな話するんですか…?」
そう言った日影の声は、少し震えていた。
「そいつの名前…聞かせてやろうか?」
「……もういいです。」
冷たい声でそう言うと、日影は立ち上がった。
なんなんだよ。とうとう俺のことまで嫌いになったのかよ。半場イライラがつのって、つい叫んだ。
「日影ッ………お前だよっ!!」
あっ、言っちゃった。
「…え?」
「えぁ、えっと……だから…」
頭の上に?マークをたくさん出している日影に俺はもうやけくそだった。
「だから、大事な奴は…お前のことだよ!日影ッ!!」
あーぁ、言っちゃった。俺いまかっこ悪いぐらい顔赤いな。きっと。でもまぁ、いいか。なんて思える自分がいることが少し笑えてくる。
「……たいよ…さん、が………おれ、を?」
「ッ…そーだよ。好きで悪いかよ」
信じられないようなものを見る目で俺を見てくる日影に、思わず悪態をついた。オレカッコわるっ!。
「……ぅッ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「は?ちょっ!?」
突然、日影がオレにベンチから倒れるように抱きついて泣き出した。オレはただ訳が分からず日影を抱きとめ、動けなくなった。つか重っ!。
日影はなんで泣いて…。
「た…太陽さんたいようさんたいようさんたいよう…さんッ!」
ちょっ、首しまっ…!。日影が力を入れて俺の首に腕を回してきた。耐えろオレ!。
「うぐっ……ッよしよーし、大丈夫だぞ。」
なんとか持ち直して背中を擦ってやると、ズビッズズッて鼻を啜る音が聞こえる。なんか子供みたいだな…。
「たいよう さん……」
「んー…?」
鼻を啜りながら日影が口を開いた。涙声のせいで少しのぶとく聞こえてきて、思わず笑ってしまう。
「俺、を…一人に しない……で…下さい、」
声をしゃくり上げながらそんなこと言うもんだから、俺はもう完全にノックアウトだった。
なにコイツ、超かわいい。
「…するわけないじゃん、バカなの日影?」
そう言って思いっきり抱きしめてやったら、また日影はびえぇって泣き出して、俺は大声で笑った。
とりあえず日影が泣き止んだら、遠山に連絡しなきゃな。「俺たち出来ちゃった。はーと。」って。