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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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リブレ

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紡がれる因縁 第4章《過去の亡霊》


……時として偽りは
人々を恐怖させるのね
嘘……それが始まり
どんな者にも役割があるってこと?
そう、だから出会えたのさ
偶然ではない必然

 第4章 過去の亡霊

 アンネから馬を借りたゼロは手綱を確りと握り締め、朝もやの中を馬を走らせて行った――。
 村から北東に馬を跳ばして約2時間、小高い丘の上にイドゥン男爵の屋敷はあった。
 イドゥン男爵の屋敷の前には門番と思われる貴族の創りだしたアンドロイド兵が壁のようにそびえ立っていた。
 ゼロは門番に向かってこう言った。
「門を開けろ」
と、しかし、門番が応じるはずもなく、いきなりゼロに向かって襲い掛かってきた!
 ゼロはそれを交わすと、相手の背後に回り剣を振り下ろした。
「ギゴォオオーー」
アンドロイド兵は不気味な音を上げ、そのまま地にひれ伏し動かなくなった。
 ゼロが剣を鞘に収めると何処からともなく、声が聞こえてきた。
「いやー、おみごと、あの門番を倒すとは……しかし、門番は飾りにすぎん」
この声はスピーカーから発せられているものだろう。
 この屋敷のいたる所に監視カメラ、レーザー銃など色々なものが備え付けてある。
「馬鹿に厳重だな……」
「ハンターごときがこの屋敷に入れるものか、そこを一歩でも動いてみろ、レーザー銃で丸焦げだ」
「やってみなくてはわからん」
そう言うとゼロは自分を映し出している監視カメラを叩き斬った!
 別のカメラに切り替わった時には、そこにはゼロの姿はもうなかった。
「あいつ、どこに行きやがった」
 屋敷の警報がけたたましく鳴り響いた。ゼロは瞬時のうちに屋敷の中に忍び込んだのだ。しかし、監視カメラでいくら探してもゼロの姿は見つけることはできなかった。ゼロはいったいどこに行ってしまったのだろうか?
 ゼロは屋敷の地下洞窟の中にいた。どうやら、ここまでは監視の手が行き届いていないようだ。
「やはり、この洞窟の中までは知らんとみえる」
と、ゼロは呟いた。
 どういうことだろうか? ゼロは以前にもここに来たことがあるのだろうか?
 ゼロは洞窟の中を歩き続けた。すると、ゼロの目の前に全長30メートルを優に越える地竜が、ゼロの行く手を待ち受けていた。
 地竜というのは太古の昔から存在する魔物の一種で、竜族というのは皆知能が高く中には神として崇められ、そして、恐れられるモノもいる。
 地竜が人の気配を感じ、身を起こし気配のほうへと目を向けた。
「……ゼロか」
どうやら、この地竜は人間の言葉が話せるらし。しかし、なぜゼロの名を?
 地竜はゼロに問う。
「ゼロよ、何をしに来た?」
「少し立ち寄っただけだ」
「そうか……以前ここに来た時も同じ事を言っていたな……あれ依頼、人間の言葉をしゃべるのは久しぶりだ……はて、以前お前がここに来たのは、いつの事だったか……?」
「300年ほど前だ」
300年!? いったい、どういうことなのか、今、確かにゼロの口から放たれた言葉は300年と聞こえた。
「そうか……300年しか、経っていないか、お前も以前とちっとも変わらん、さすがは、半分だけ妖魔のことはある」
なんということであろうか、ゼロは人間ではなかったのだ。確かにそうだ、人間離れした能力の数々がそれを物語っている。しかし『半分だけ』とはどういうことなのか?
「ゼロよ、どうだ、またあのときのように一戦交えてみぬか?」
それに対してゼロは、
「断る、今日は、お前と戦っている暇などない」
それを聞いた地竜は少し肩をすくめ元気のない声で、
「そうか……確かに、お前とやり合っても、わしに勝ち目はないが……」
「質問がある」
ゼロが話を突然切り出した。
「なんだ、言ってみろ」
「イドゥン男爵はどうした?」
「あ奴か……あ奴なら、お前との戦いに敗れた直後に、この屋敷を後にした、今は何処で何をしているのか……?」
「そうか、やはりな……」
イドゥン男爵は、この屋敷には、もういない? では、今、この屋敷にいるのは誰なのか? 村の人々をさらったのは誰の仕業なのか? 謎は深まるばかりだ。しかし、ゼロは最初から全てを知っていたかのように表情一つ変えない。
「では、この屋敷の今の主は誰だ?」
「わからん、わしは、この洞窟でひっそり暮らしているだけの忘れられた存在だ」
「たまには外に出たらどうだ?」
「わしの時代はもう終わった、出る幕もなかろう」
「そうか、また会おう」
「もう行ってしまうのか?」
「この仕事が全て終わったら、また、ここに来る。今度は本気で一戦交えよう」
「バレておったか」
ゼロは地竜のもとを後にした。

 洞窟を抜けると、そこは屋敷の主の部屋につながっていた。
 この洞窟は、万が一に備えて、敵が攻めてきた時に外への脱出口として造られたものだった。ゼロは以前この屋敷に潜入したとき、あの洞窟を見つけたのだ。
 主の部屋には生物の気配は一つもなかった。ゼロが他の部屋に移動しようと部屋を出ると、そこはすでにアンドロイド兵によって取り囲まれていた。
「探したぞハンター、まさかハンターごときがこの屋敷に侵入する事ができるとは」
「隠し通路を知らんのか、ここの主は?」
「隠し通路……? そうか、そんなものがあったのか、後で塞がなくては――、さてハンターよ、もう逃げ場はない、どうする?」
「こうするまでだ――」
ゼロは剣を抜き、アンドロイド兵達に斬りかかった。しかし、アンドロイド兵の数は一向に減らない、むしろ増えているくらいだ。
 ゼロは走った、アンドロイド兵を切り倒しながら、屋敷中を走り回った。しかし、ゼロはいつの間にか廊下の隅へと追いやられていた。逃げ場はもうない、どうするゼロ!
 その時突然、ゼロの手から剣が滑り落ちた。そして――ゼロの全身から力が抜け、ゼロはそのまま床に倒れこんでしまった。
ゼロの身にいったい何が起きたのか!?

 ゼロが目を覚ました時には、辺りはアンドロイド兵の残骸がガレキの山を作り上げていた。いったい、セロが気を失っている間に何が起きたというのか?
 ゼロは身体をゆっくりと起き上げ、こう呟いた。
「また、発病したか……」
また? 以前にも、これと同じようなことがあったのか? ゼロは自分が気を失っている間に起こった出来事を全て把握しているように思えた。
 辺りは静けさに満ちていていた。どうやらアンドロイド兵は全て破壊されたようだ。
「やはり、残るは監視部屋か……」
先ほどから、敵はゼロの行動を監視カメラによって監視しつづけている。そんなことができるのは主の部屋か監視部屋のみ。主の部屋には誰もいなかった……。
 となると残るは監視部屋のみ。しかし、これは300年前の話だが……。
 ゼロは監視部屋へと向かった。
 ゼロの感は的中した、敵は監視部屋にいた。
「ハンターよ、よく来た」
部屋の中は暗闇に包まれ、声は聞こえるが姿は見えない。
「村人を返してもらおう」
「それは出来ぬ相談だな」
「しかたあるまい」
と言ってゼロは剣が抜くと、暗闇の中の声が、
「ま、待て、私に向かって剣を抜くとはいい度胸だ、私をイドゥン男爵と知っての事か?」
これを聞いたゼロは苦笑を浮かべた。
「……フッ、この道化が、イドゥン男爵は300年前に屋敷を出たと聞くが?」
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)