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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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リブレ

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 そう言うとゼオスはゼロの漆黒の翼を二つとももぎ取りゼロを壁に思いっきり投げつけた。それを見たメフィストはもの凄いスピードでゼオスに襲い掛かった。
「メフィストともあろう者が頭に血が昇ったかな?」
 ゼオスは襲い掛かるメフィストの懐に入り込み、メフィストの顔を鷲掴みにしてそのまま壁に叩きつけた。
 ゼオスの指の間から蒼い血が滲み出したと思うと、メフィストの右手が音もなく動き、ゼオスの腹を貫いた。
「ぐはっ!」
 メフィストの左手がゆっくりと動き自分の顔を鷲掴みにしているゼオスの手を振り払った。
 メフィストの顔は血で汚されていたものの傷一つなかった。傷は妖魔の超人的な回復能力によって瞬時に回復してしまったのだ。
「腕を抜いてくれないかな?」
 腹を衝き抜かれたゼオスであったが今の言葉からはそんなことなど微塵も感じさせなかった。
「誰の”DNA”だ?」
「その前に腕を抜いてくれるかい?」
「私のDNAだな? そして、キサマは性格にはハーフでは無かった。幾つの生物を取り込んでいる?」
 メフィストはゼオスの内臓器を鷲掴みにして腹の中でかき混ぜた。
 ゼオスの口から血が玉が頬を伝って零れ落ちる。しかし、彼の顔は笑っていた。
「僕と君は一つにやっとなれた、こんな嬉しいことはないよ」
 ゼオスは笑いながら泣いている。
「私は”ここにいる”」
「だいじょうぶだよ、もうすぐ君は僕の中だけで生きることになるんだから」
 そう言うとゼオスは自ら腹に突き刺さるメフィストの腕を抜き、そのままメフィストの腕をもぎ取った。しかし、メフィストは取り乱す気配もない、至って冷静でその言葉は冷たい。
「やはり終わるのはキサマだ」
「!?」
 メフィストの目線はゼオスではなく、その後ろを見ている。そして、ゼオスの身体は肩から下に斜めに切り裂かれた。
 ゼオスの身体は二つに裂け地面に転がり落ち、紫の血が床に広がる。その上に立っていたのはゼロだった。
 ゼロの持つ剣の先からゼオスの血が地面に滴り落ちる。そしてゼロは剣を持ち替えて、何度も何度もゼオスの身体に突き刺した。その度にゼオスの身体が震える。ゼオスの息はまだある、まだ死んではいない、メフィストのチカラを身体に取り込んだゼオスの生命力は身体を二つに裂かれてもなお尽きることはない。しかし、肺を切り裂かれて声を出すことはできない。
「もういい」
 メフィストがそう小さく呟くと、ゼロは剣を床に落としそのまま剣と共に床に倒れこんだ。
 メフィストはゼオスに近づき、上から見下ろしてこう言った。
「妖魔には死という概念は無い、核さえ残っていれば長い年月はかかるだろうが再生は可能だ。だがその核を破壊されるとどうなるかはキサマにもわかるな? 妖魔には『死』ではなく『消滅』がある。肉体は跡形も無く消滅し、精神すら残らない、無に還るのだ。妖魔はそれを恐れる」
 ゼオスの身体はメフィストが話している間に元通りに戻っていた。
 メフィストはゼオスの首を鷲掴みにして、そのまま上に持ち上げた。
「しかし、世の中には例外というものが存在する」
 メフィストの手が高く上げられ、そのままゼオスの顔に振り下ろされた。
 ゼオスの顔半分にはメフィストの爪の後がくっきりと刻まれ血が滲み出している。
「その傷は決して癒えることはない、血は止まるだろうが傷跡は残り痛みが永遠に付きまとう」
 メフィストが手を離すとゼオスの身体は人形のように崩れ落ち地面に膝を付いた。
 炎の魔の手がついにこの部屋まで伸びて来た。炎は一瞬にして辺りを包み込み、建物が倒壊し始めた。
「行くぞゼロ」
 メフィストは床に倒れこんでいるゼロに手を差し伸べたがゼロは手を伸ばそうとしない。
「……行かない」
「何を言っている?」
「ここで死んだ方がいいんだ」
 メフィストは無理やりゼロの手を掴もうとしたが、ゼロはそれを振り払って突然炎の中に飛び込んで行った。
「ゼロ!!」
 メフィストはゼロを追いかけようとしたがすぐに見失い、そのうえ彼を行かせまいとゼオスがメフィストの身体にしがみ付いた。いや、抱きしめた。
「ふふ、メフィスト僕と一緒にここで死のう」
 メフィストはゼオスを振り払い、ゼロを追いかけようとするがゼオスはメフィストを逃がすまいと渾身の力を込めてメフィストの身体を抱きしめる。
「炎の中じゃいくら妖魔でも核を焼かれ塵と化す」
「黙れ!!」
 メフィストはゼオスを振り払い炎の中へと飛び込んで行った。
「くくく……最期までフラれっぱなしか…あははは……」
 ゼオスの身体は炎の渦の中へと吸い込まれて行った。

 建物は全壊して焼け焦げた匂いが辺りに充満する。
 メフィストは灰となった建物を見つめている。その眼差しはとても物悲しく切ないものだった。
 ゼロのことを炎の中で懸命に探したが、結局見つからずメフィストは己の無力感に苛まれた。
 ゼオスに殺害された研究所職員たち、研究所の火災や爆発で死んで逝った者たちの遺体は少しだが回収された。だがその中にはゼロの遺体はなかった。ゼロの生死すらわからない。
 この事件あと研究所はすぐに再建されたがその研究所にはメフィストの姿は無かった。メフィストは研究所を後にして忽然と姿をくらましてしまった。彼の噂の中には人間の世界に溶け込み家庭を持ったなのどいう信じがたい物もあるが真実であるかどうかは定かではない。
 ゼロの生死はあの事件から400年以上という長い月日流れた今でも未だわかっていない。だが、今この世界には伝説として全世界に名を轟かす一人のハンターがいる。『紅い死神』と呼ばれるそのハンターは今この時も世界のどこかで活躍しているに違いない。
 ハンターゼロ……。その名を知らぬ者はこの世界にはいないだろう。

 END
作品名:リブレ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)