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ろーるぷれいいんぐ

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[普通の犬]が[猛犬]になった。
「ぐあるるる」猛犬が傘に食らいついて、オレの手から傘をもぎ取った。

オレは【逃げる】を選んだ。
「ううわん」オレに噛みつこうと飛びついた猛犬が、チェーンによって前進を阻止された。

家の外に出たオレは《ステイタス》でオレをチェックした。装備の【壊れた傘】が無くなり、攻撃力が落ちた。経験値がほんの少し上がった。

――もっとガンバラナクテハ―― そう思ってから、何のために戦っているのかを忘れていることに気づいた。

――わるいひとにとらわれているおひめさまをすくう―― いやいやそんな子供っぽいものじゃなかった筈だ。

――滅亡にむかっている人類。原因は人類そのもの。選ばれた人間が地球をリセットして、エリートが人類をやり直す―― いやいや、そんなものでもなかった気がする。

――いい学校に入って、いい会社に就職して、いいお嫁さんと結婚し、いい子供を育て、いい老人になって、いいお墓に入る―― こんなもののために戦っていたのか。いやいやそうではあるまい。もっと崇高な使命があったはずだ。

そのうちに思い出すだろうと楽観的に考えて、オレはまた冒険の続きに入った。

次はアパートだった。どの扉も開かない。おかしい今までプレイしたゲームはすっとドアが開いて中へ入れたのにと思いながら、次々とドアを開けようとした。
「開いた」やっと中へ入れる場所があった。オレはためらわずに中へ入った。まず台所へ入って、冷蔵庫の前に立ち【ひからびた野菜・腐った肉・ヨーグルト】からヨーグルトを手に入れた。

次に寝室に入ると、ぐっすり寝ている男が居る。まだ若い。夜勤のアルバイトから帰ったばかりなのであろうか。モンスター遭遇場面にはならず、オレはタンスを開けた。めぼしいものは無かった。押入を開けると【汚れたパンツ・臭い靴下・ヘルメット】からヘルメットを選び、すぐ《装備》した。ピロロンと頭に音が響いて防御力がだいぶ上がった。

また台所に戻り、テーブルの上に小銭入れを見つけた。【お金をとる・何もしない・お金を入れる】から【お金をとる】を選んだ。残金が1980円から3150に増えている。

部屋を出て残りのドアを調べたが開かなかった。また大通りの出たオレは市が活動を開始しショップが開く時間になっているのを知った。

冒険のための武器を買うために、金物屋に入ったオレはショーケースの刃物を穴のあくほど見ていたが、なかなか決断が出来なかった。長い間そうしていたので不審に思ったのだろう店員が、じっとこちらを見ている視線に気づいた。オレはジーパンにTシャツ、工事現場ヘルメット姿だった。恥ずかしがりやのオレはポッと顔を赤らめ、下を向いたままその場所を離れる。なおも店員の視線はオレを捉えて離さない。オレはその視線に押されるように店を出た。

文房具屋に入ったオレはカッターナイフを買った。すぐ装備し、攻撃力が少し上がった。

運動具店に入って、剣道の胴を防具に欲しいと思ったが、高価なので諦めることにする。
なかなか思うような防具が無い。オレは肩を落として店を出た。

また当面の目的である――拾ったアイテムを売る――もしなくてはならない。オレは手当たりしだい他人の家に入り、いや入れなかったので、家の外に置いてあったビールの空き瓶を酒屋に持っていった。70円しか残金が増えなかった。

今度のゲームはセコイ。そう思いながらもオレは諦めず市を徘徊し続けた。

行き詰まったオレは、誰か重要な人物に接触していないのでは無いかと思いつき、自分の前に現れた人に次々に挨拶をした。
「こんにちは」 一瞬立ち止まり、首をかしげて通り過ぎた人。
「こんにちは」 無視して通り過ぎた人。
「こんにちは」 曖昧な笑顔を浮かべながら通り過ぎた人。
「こんにちは」 嫌悪感を表して通り過ぎた人。
「こんにちは」 「こんにちは」と言いながら頭が混乱したまま通り過ぎた人。
「こんにちは」 「どなたでしたでしょうか?」と聞き返され、「さあ、どなたでしょう」と言ったら睨まれた。

なかなか思うようには進まない。このゲームにはバグがあるのではないだろうか。オレは歩きながら打開策を模索した。

――パーティを組むのではないだろうか―― そう思うと、すぐ人が集まる所を思い浮かべた。酒場で仲間を探すのは、高校生になったばかりのオレには無理だ。お金もかかるだろう。さて、どこに行けばいいのだろうか。コンビニに行って週刊誌の立ち読みしている若い女性に声をかける。
「すみません、オレと一緒に冒険に出ませんか」
女は無視して一生懸命に週刊誌を立ち読みしている。

「パーティを組みませんか」
女は、気持ち悪そうにオレを見て、そのまま弁当のコーナーの方へ行ってしまった。今度はマンガを立ち読みしているマッチョな男に声をかけた。

「お兄さん、オレと一緒に冒険に出ない?」
男は振り向くと、一瞬目が点になって、点がだんだん大きくなり、黒目大きく見開いて、
「あら、うれしいわ」と言って腰をくねくねさせた。

今度はオレの方が目が点になり、口をポカンと開けた。男がオレの手を取り、ピタッと側についてきた。オレは生理的嫌悪をもたらし、その手をふりほどき、慌ててコンビニを出た。

「ねえ、どうしたのよ、冒険は」
後ろから太くて高い声が追いかけてくる。オレは走ってスーパーに逃げ込んだ。ゼイゼイ肩で息をしながら、後ろを振り返った。幸いマッチョな男は追いかけてこなかった。

携帯ショップでは、「すみません」と話しかけただけで睨まれてしまって、パーティ作成は暗礁にぶつかり、大破した。

――ドラゴン市ではやることが無くなった―― そう冷静に判断したオレは、シャドー町に移動することにした。ここへ来る時には公園を経由してきたが、帰りのルートは少し遠回りになる病院と小学校経由することに決めた。このルートには何か進展があるかもしれないという期待が大きかった。

病院の駐車場についたオレは手前の車からドアを点検し始めた。もし開いても運転することは出来ないが、もう習性のようになっているドアの前に立って開くかどうかを確認する作業をしばらく続けた時、後ろから「ちょっと」という声でオレは振り向いた。

「何をしてる」
駐車場の管理人であろうと推測されるオレの父親よりも年上の男が、警察官のようにオレを問いつめた。

「アイテムさがしです」
オレは悪びれず答えた。

「あいてむ?」
予想外の答えに管理人は頭の上に?マークを放射状に5つほど広げた。

「それから、ヒントをくれる人を探しています」
もしかしたらこの男がゲーム進行の鍵を握っているのかも知れない。そう期待感をこめて言う。

「何のヒントだ」
頭の上の?が電球が点いたマークになった管理人は、オレの顔を見据えながら携帯を取り出してどこかに電話を始めた。
「ハイ。あのー患者が……駐車場です。ええ、別に、ハイ、そうゆうことは無いです」

管理人が電話している内容はオレにも解った。勘違いされているんだ。オレは病院の看板を見た。何と精神科の病院だった。日頃から病気もしないので気にしていなかったが、ここは精神科の病院だった。

事態は急を要する。オレは冷静にそう判断した。
作品名:ろーるぷれいいんぐ 作家名:伊達梁川