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夢の途中5 (151-181)

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斎場は大宮市内の郊外にあり、その近くに大規模な公園墓地を有していた。
花田家先祖代々の菩提寺は市内の別の場所に在ったが、巌はこの近代的で美しい公園墓地の何処かに自分の墓地を購入するつもりでいるようだ。
登美子を荼毘にふす前に最後のお別れがあり、親族一同改めて涙した後、登美子の棺は炉の中に消えた。
骨上げまでは1時間半待たなければならなかった。

孝則は相変わらず巌とは一言も口をきかず、親族の輪から離れている。
そこに美智子がやって来た。
『はい、孝則さん。 こんなものしかないけど。』
美智子は孝則に温かい缶コーヒーを差し出した。
「お、サンキュー・・・・人間なんて呆気ないもんだな・・・・
何時も呑気だった母さんが、こんなに早く逝ってしまうなんて・・」
『・・・そうよ、呆気ないものよ、人間なんて・・・私なんて、一度に家族総て失ったのよ・・・・まだ5歳だったから、何も分からなかったけど・・・孝則さんなんて、幸せな方よ・・・』
「・・・そうだな・・・美智子に比べれば俺なんて・・・・・」
『でも、お母様も幸せだったと思うわ・・・結婚して、家庭を持って、子供を産んで・・・私も子供、欲しいなァ・・・』
「美智子のお婿さん、親父は未だ探して来ないのか?優秀な外科医の・・美智子ももう三十だろ?急がないと高齢出産になっちまうぜ・・」
『孝則さん、そんな事本気にしてるの?お父様はああは言っているけど、本当は孝則さんに戻って来て欲しいのよ?』
「まさか・・親父がそんな事思うわけ無いじゃないか・・・昨日だって香織に対して酷い事を言って・・・・」
『そうね、お父様、あの方の事、本当に嫌っているようね・・せめて、お孫さんでも生んで差し上げたら、少しは変わって来るのにね・・・出来ないの?あの方。』
「・・ああ、何度も調べて貰ったけど俺も香織も別に何処か悪訳じゃないんだよ・・・」
『孝則さん、子供好きなんでしょ?』
「・・ああ、そりゃな・・・・・」

『私が孝則さんの子供、産んであげようか?』
美智子が孝則の顔を覗きこみ言った・・・
 


 「・・み、美智子、悪い冗談言うのはよせよ。」
『冗談じゃないわ、本気よ。 あ、ひょっとして昨日でもう出来てるかも? ふふふ♪ 』
「昨日?・・・・まさか!」
『孝則さん、本当に覚えてないの?  こんなにイイ女抱いて、覚えていないなんて・・・信じられないわ。
孝則さん、今朝起きた時、パジャマ着てた? 何も身に付けていなかったでしょ? 』
「うっ!・・・・・・・それは・・・本当なのか? 」

美智子は少し離れた場所に孝則を引っ張り出し、空いていた控室に連れて入った。
そしていきなり孝則にしがみつくと強引に唇を重ねた。
『孝則さん、これは私と孝則さんだけの秘密よ・・・・アノ人に知られなければ良いだけの事よ・・・私、孝則さんと結婚したかった!だからあの女が憎いわ!憎くて憎くて堪らない!
でも、・・・・・孝則さんはあの女と別れる気持ちは無いんでしょ?  
だったら、せめて私に孝則さんの子供を産ませて!
あの女に出来なくっても私には出来るかも知れないわ・・・
認知してくれなくても良い! 私が生涯かけて立派に育ててみせる! 
この花田総合病院の立派な跡取りとして育てて見せるから!』

孝則は美智子の激しい気迫にたじろいだ・・・





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章タイトル: 第21章  月 2008年夏


 優一は二週間ぶりに香織の店を訪れた。
優一自身、札幌支社や大阪本社での会議、更に道内の函館で新しい架橋の引き合いが出て来たため、情報収集の為支社の営業担当と函館の役所廻りをしていて、全く藤野には帰って居なかった。
 その前に熊田の事故が在ったため、香織が暫く看病の為店を休むと知らされていた。
 優一が藤野に不在の間も、バイパス工事の方は予定通り進んでいた。
 時折古畑から工事の進捗状況の報告が電話やメールで在った。
 香織の店が今週初めから開いている事も・・

 季節は間もなく7月も終わろうとしていた。

「おはよう♪ ママ、ご無沙汰♪(^。^)y-.。o○」
『あ、林さん、その節はご不便掛けて申し訳ありません<(_ _)> 
古畑さんには聞いていましたけど、お忙しいんですってね?  』
「ああ、そうなんだ、札幌や大阪を行ったり来たりでなかなかこっちに帰れなくてね・・・
昨日も最終の電車で帰って来たんだよ。 
古畑からママの店がもう開いてますってメールが入っていたから(^^)v」
『まあ、嬉しい♪(#^.^#) わざわざ最終で帰って来て下さったのね♪』
香織は優一と親しく言葉を交わしながら、手だけは忙しく動かして、バタートーストにサラダ・プレーンオムレツ・フルーツを皿に盛り付け、カウンターに坐った優一の前に置いた。
『はい、お待ちどうさま♪』
「ありがとう♪ 処で熊田さんの様子はどうだい?」
『手術は順調に行って、あとはリハビリかな?多分後二週間程で退院できるんじゃない? 足以外は何ともないから、退屈でしょうがないんじゃない?』
「・・そうなんだ・・僕はまた、退院するまでママは店を開かないと思ってたから・・・」
『・・・うん、そうなの・・・最初は私もそうしようと思ったんだけど・・・・』
他にも客が在り、込み入った話はしにくいようだったので敢えてその先は聞かなかった。



その日の午後、例によってお昼時を少し外した時間に、優一は古畑と再び香織の店に寄った。
 [ママ、久しぶり~~♪^m^]
『まあ、古畑さん、昨日も来たじゃない?(*^。^*)あら、林さん、今朝ほどはどうも♪(#^.^#) 』
「こんにちは。 (^。^)y-.。o○ やっぱりお昼は此処で戴かないとね♪ 今日のランチは何ですか?」
『今日は煮込みハンバーグ定食よ♪!(^^)! それで宜しい?』
「異議なし♪(^。^)y-.。o○  だよな?」
[イエッサ~~~♪(^^)v]

二人の注文と同時に香織の手が動き始める。

『もう、あっという間に7月も終わりですわね・・お仕事の方は順調ですの?』
「ああ、お陰さまで♪ なにしろ、夢島きっての敏腕現場監督がついてるからね♪(^。^)y-.。o○ 工程も予定通り、無事故で順調さ♪ な、古畑君?」
[・・・(^_^;)・・・夢島きっての、と言われると照れますが・・・・ま、前半の長雨には参りましたが、その後が好天続きで助かりましたね♪(=^・^=) この調子だと、お盆過ぎには堤の補強も終わりそうですね♪(^^)v あとは地ならしてアスファルトを打てば、10月半ばには完工出来るでしょう♪(^。^)y-.。o○]
「そうなると・・・・ママの美味しい料理も、戴けなくなるなァ・・(/_;)・・」
『え?・・・』
香織は二人の前に、デミグラスソースがたっぷりかかり、更にその上に目玉焼きの乗った煮込みハンバーグの皿を置いた。
『アラ、あと半分の工事が来年残ってるんじゃあ?』
[ママ、部長は今引っ張りダコでね、新規の受注を取る為に技術アドバイザーとして、最近は営業部員と同行してあっちこっち走り回っておられるんだ・・・
作品名:夢の途中5 (151-181) 作家名:ef (エフ)