手のひらに幸せ
自分のことを「世界一の幸せ者」って断言できる人間って、いったいどれくらいいると思う?
私の言葉に、拓真は「5人くらいじゃない?」と、こっちを見もせずに答えた。手には変わらずコントローラーが握られていて、ボタンの間をせわしなく拓真の指が動きまわっている。
「根拠は?」
自分でもわかるくらいに不機嫌な声が出た。
いつものことだとわかっているものの、やっぱり目も合わせない状態を会話と呼べるだろうか?人と目を合わせられないなんて、これだから引きこもりは。全然、わかってないのだ、ニンゲンカンケイというやつを。
「や、そんなにいないだろうなーとは思うけど、ゼロってわけでもないっしょ。地球って、今、どれくらいだっけ?50億人くらいいるんでしょ?だったら5人くらいいた方が自然じゃね?配分的に」
ちゅどーん、と拓真が見入っているテレビ画面から安っぽい音が漏れる。拓真の押したボタンが、2次元の敵キャラを粉砕したようだ。ちょっとした砂ぼこりみたいなものが画面の端に映っている。でも、すぐに消えた。いつまでも残っていられたのでは邪魔なのだ、ビジュアル的に。私も昔はこの手のゲームに熱中したことがあるからわかる。
「ふーん、じゃ、世界一幸せだと思える人間って、10億人に一人しかいないのね。拓真の言う、自然な配分というやつには」
「ん、たしかに多いかもな。一人しかいない、っていうのが模範解答だよな。世界一、って言うくらいだし」
多い、か。
拓真の横顔から目を逸らす。ぎらぎらと光るテレビ画面は、電気を点けていないこの部屋には唯一の光源で、押しつけがましい光は目に痛い。
「理沙はさ、見たことない?病人のドキュメンタリー」
唐突に拓真に聞かれて、私はまた拓真の方を見る。相変わらず、その目は画面に釘付けだ。
「日本でもアメリカでもなんでもいんだけどさ、ほら、あるじゃん?難病を患った子どもが痛々しい姿で闘病生活送ってるようなやつ」
拓真の口から「患った」とか「闘病生活」という単語が出てきたことに、私は何も言えなかった。
私の言葉に、拓真は「5人くらいじゃない?」と、こっちを見もせずに答えた。手には変わらずコントローラーが握られていて、ボタンの間をせわしなく拓真の指が動きまわっている。
「根拠は?」
自分でもわかるくらいに不機嫌な声が出た。
いつものことだとわかっているものの、やっぱり目も合わせない状態を会話と呼べるだろうか?人と目を合わせられないなんて、これだから引きこもりは。全然、わかってないのだ、ニンゲンカンケイというやつを。
「や、そんなにいないだろうなーとは思うけど、ゼロってわけでもないっしょ。地球って、今、どれくらいだっけ?50億人くらいいるんでしょ?だったら5人くらいいた方が自然じゃね?配分的に」
ちゅどーん、と拓真が見入っているテレビ画面から安っぽい音が漏れる。拓真の押したボタンが、2次元の敵キャラを粉砕したようだ。ちょっとした砂ぼこりみたいなものが画面の端に映っている。でも、すぐに消えた。いつまでも残っていられたのでは邪魔なのだ、ビジュアル的に。私も昔はこの手のゲームに熱中したことがあるからわかる。
「ふーん、じゃ、世界一幸せだと思える人間って、10億人に一人しかいないのね。拓真の言う、自然な配分というやつには」
「ん、たしかに多いかもな。一人しかいない、っていうのが模範解答だよな。世界一、って言うくらいだし」
多い、か。
拓真の横顔から目を逸らす。ぎらぎらと光るテレビ画面は、電気を点けていないこの部屋には唯一の光源で、押しつけがましい光は目に痛い。
「理沙はさ、見たことない?病人のドキュメンタリー」
唐突に拓真に聞かれて、私はまた拓真の方を見る。相変わらず、その目は画面に釘付けだ。
「日本でもアメリカでもなんでもいんだけどさ、ほら、あるじゃん?難病を患った子どもが痛々しい姿で闘病生活送ってるようなやつ」
拓真の口から「患った」とか「闘病生活」という単語が出てきたことに、私は何も言えなかった。