笑撃・これでもか物語 in 歯医者
高見沢一郎、本日のところはとりあえず──歯医者の治療椅子から無事生還。しかし、溺死寸前の後遺症か、まだ脳が麻痺している。
それでも虚ろではあるが、口から一言漏れる。
「No matter how hopeless……、どんなに希望が持てなくても、と言うことか」
テクノ歯科からの帰り道。夜はもうすっかり更けている。辺りはシーンとした静寂が漂っている。そして冷えた夜風が、高見沢の頬を気持ちよくさすって行く。
時代の最先端を突っ走しり、それを得意気とするハイテク先生。そして、チャチチュチェチョの可愛い歯科助手・ナオちゃん。
この二人の顔がボヤッと高見沢に浮かぶ。
「あ〜あ、また一週間後に……、歯石取りか」
高見沢はそう思いながら「No matter how hopeless.」と、もう一度噛み締めるかのように呟いてみる。
そしてその後に、高見沢はまるで大きな決心をしたかのように、さらに言葉を付け加えるのだった。
「どんなに希望が持てなくても、アイ・プロミス、約束するよ。ネバー・レットゴー、僕は決して歯石取りをあきらめないぞ、……、ナオちゃん」
おわり
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊