笑撃・これでもか物語 in 歯医者
「は〜い」
二〇歳前後の若い歯科助手さん、明るく答えて、高見沢のところへ歩み寄ってきた。
「アメリカで羽交い締めにしてくれた重量級のオバチャン助手、彼女とはえらい違いだなあ。日本ではカワイコちゃん、やっぱり日本はいいよなあ」
高見沢は急に嬉しくなってきた。そして男の笑みが零れる。
そのナオちゃんがまた──可愛いお声で──高見沢に指示を飛ばしてくるのだ。
「ちょっと、イチュを倒チまチュからね、大丈夫デチュか? 頭に気を付けまチョーね」
オッオー、何とキュートなことか!
最近流行りの舌足らず語。まるで幼稚園児に話すようにチャベってくれはりま〜す。
「痛かったら、左手を上げまチョね」
高見沢はそう言われながら、目の辺りにタオルを被せられた。そして、ナオちゃんから次の命令が。
「お口を大きく……、ア−ン」
高見沢は可愛いナオちゃんの「ア−ン」についついつられて、思わず「ア−ン」と口を開けた。
高見沢はもう中年。そんなオッサンが……思い切り「ア−ン」だって。
高見沢は喉チンコがマル見えするほど大きく口を開けながら、「俺はひょっとしたら、アホちゃうか?」と一度だけは反省をする。
しかし、「こんなロリコン趣味も、悪くはないなあ」と正直嬉しくてたまらない。
「それじゃ、歯石取りまチョね」
ナオちゃんは可愛く宣言し、作業にかかる。
「今の日本の歯医者さんて、こんなのが流行っているのか。ええオッサンに、何々チマチョか。う−ん、なんとまあメルヘンチックというか、ねんねチックな世界だよなあ」
高見沢は心底感じ入った。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊