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セールス・マン
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庭自慢とビスマルク

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 耳朶に触れそうで触れない位置で、囁く。慣れない愛撫に目を閉じ、身を任せる。
「私のセンスなんて信用しないって言ったくせに」
「そうだったかな。まあ、いいや。君の着ていく服に合わせよう」
「キツネ」
 呟けば、肩に腕が回される。
「でも似合う服がないの」
「前にも言ってたな」
 階段に足を引っ掛け、首を傾げる。
「まあ、今日行って買えばいいさ」
 踊るように身を揺らしていれば、ようやく身が触れ合う。現実はここにあるのだと知る。
「それを買って、あとは少し貯蓄かな」
「珍しいこと言うのね」
「ベンが……シーゲルが、投資してくれって泣きついてきたんだ。ネバダのど真ん中に良い物件があるからって。マイヤーの真似事をして、カジノを作るとか」
「ネバダって、砂漠でしょう?」
「ああ」
「出してあげるのね」
「ああ」
 これから先のことを考えてはいけない。分かっていても、考える。けれど、グリアは鎮まり返った悲しみの中で、しっかりと確信していた。
「どれくらいあるんだ?」
 これから先、どれほど長い間この広い屋敷で待つことになろうとも、あの居心地の良く美しい庭さえあれば、耐えていける。
「大丈夫よ」
 柔らかく肩に乗った手を撫でながら、グリアは微笑んだ。
「言ったでしょう? お金は、いつ必要になるか分からないって」




 ‐了‐