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表と裏の狭間には 五話―光坂の体育祭―

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倒したグループに代わって、俺たちが狙い撃ちする。
蓮華が、楽しそうにモデルガンを撃っているのが妙に印象的だったのだが。
アークの構成員って、一体どうなんだろう。
本当に、強いのか?

~ゆり視点~
あー………。
あたしたちは、出会った敵を片っ端からなぎ払いながら進んでいった。
前衛はあたし、後衛は煌。
あたしたちは電撃戦タイプなのだが、囮作戦も結構使う。
あたしが引き付ける間に煌が後ろから回り込んだりとか。
さて、そんな中、あたしたちはあるグループを狙っていたのだが。
なんか、どこかから狙われて、あたしたちが撃つよりも早く倒されてしまった。
………正直に言うけど。
予測できなかった。
全く気付かなかった。
あたしも、煌も。
一体、誰?
輝?耀?礼慈?理子?
あたしに気付かれないように、あたしたちの得物を奪うなんて。
ありえない。
「おい、ゆり!」
煌に呼ばれて、あたしは我に帰る。
「え?何?」
「狙われてる。移動するぞ。」
「OK、分かったわ。」

~輝視点~
あっちゃー。
気付かれちまったっすね。
「残念だったの。」
さて。こうして気付かれた以上、こっちの後ろを取られるのは時間の問題だ。撤収するしかないっすね。
「あーあ。ゆりが動揺してるみたいだったからいけると思ったんすけどね。」
「煌が気付いたの。」
「チッ。あの野郎、相変わらず余計なことに気付くな。まあいいっすよ。取りあえず逃げるのが正解っすね。」
という訳で、さっさとトンズラするとしよう。
あの二人に補足されたら、逃げ切る自身がないっすよ。マジで。

~理子視点~
わっちと礼慈は今、別行動をしていた。
鳶に油揚げ、漁夫の利、そういったものを狙っていくことにしたのだ。
だから、わっちと礼慈はそれぞれ、別のグループを誘導している。
適当に弾を放ち、敵意を煽り、引き付け、逃げ、誘導する。
さて。礼慈は上手くやっているだろうか?
って考えてる場合じゃないよ!?
なんか知らんけどこっちに特攻してきてるし!
わっちは慌てて物陰に隠れる。
そのままわっちのいた場所を通り過ぎ、向こうの方へ行ってしまった。
すると、その方向から戦闘の気配が。
「……理子。」
「あ、礼慈。上手くいったみたいね。」
「……仕掛けは上々。」
さて、じゃあ後は疲弊したところを狙い撃ち――
「なんかもう目をつけてる奴がいるわね。さくっと始末しましょうか。」
と、銃口を向けるのだが。
「……理子。あれ。」
「え?」
礼慈に言われた方角を見ると。
潜んでいるゆりと煌の姿が!
「やっべ、逃げないと!」
「……元からそのつもり。」
という訳で、わっちはさっさと逃げることにした。
仕方ないでしょ!?

~学校では~
さあ会戦からしばらく時間が経過しましたが、各々はどう動いているでしょう?
楓ゆり・星砂煌コンビが獅子奮迅の戦いを繰り広げております!
なんということでしょう!隠れている敵までも発見し、即座に撃破!
あまりにも圧倒的な実力です!
対するその他の組はどうでしょうか?
おっと、宵宮理子・蘭崎礼慈組は敵同士を誘導し、同士討ちを狙う作戦に出たようです!
おっと、狙い通りぶつけました!
後は潜んで横から撃つだけ――
おっと!
星野聡・大野美香組が打ち合うグループを見つけた!
こちらも狙う体勢に入った!
更に星砂輝・耀組も目をつけた!
楓ゆり・星砂煌組もだ!
おっと?
宵宮・蘭崎組、星砂兄妹組は唐突に離脱、逃げていきました!
なにがあったのでしょう?
おおとここで予想外の展開が!
柊紫苑・雅蓮華組が横合いから撃ち合う二組とそれを狙う星野・大野組を強襲!
見事に仕留めました!
おおっと!?
楓・星砂組はこれを見た途端逃走を開始!
それぞれバラバラの方向に逃げていきましたが………。
実は残っているのはこの四組だけです!

時間切れになってしまった。
手を抜いているわけじゃなく、事実だ!
まさか生き残るとは思ってなかったんだけどなー……。
「やりましたね!紫苑君!」
「うん。よかったよかった。」
まあ、これでかなりの得点が入るだろう。
と思っていたら、四組も残っていたので、大した点にはならなかった。
まあいいさ。
クラスの連中は俺が残るとは思ってなかったのか、お祭り騒ぎだった。
でも、残ってるのが楓班の連中だけって一体………?
俺はただの偶然だけど、他の連中は間違いなく実力だろうし。
まあいいや。
体育祭の閉会式を終え、後は帰宅するだけだ。
「紫苑君。」
と、蓮華が声をかけてきた。
「ん?なに?」
「あ、あの………今日は楽しかったです。ありがとうございました。」
「ああ、うん。俺も楽しかったよ。こっちこそありがとうね。」
「えっと………あの………。」
「ん?」
「あ、いえ………。」
「じゃあ俺、そろそろ帰るよ。またね。」
「あ………はい。」
蓮華の様子がちょっとおかしいような?
何か言いたそうにしてるんだけど………?
「じゃね。」
まあいいか。
俺は自宅へと足を向け――
「あ、あのっ!」
「ん?」
蓮華が大きな声で呼びかけてきたので、振り返る。
すると蓮華は『あ………』とまた俯いてしまう。
しばらく待っていると。
「あの………紫苑君………良かったら、また………。」
「また、何?」
「また、一緒に遊びましょうね。」
蓮華は、とびきりの笑顔でそう言った。
「ああ。」
俺も、笑顔でそれに応えた。

帰宅。
「お兄ちゃんお帰り!」
「ああ、ただいま。」
何だかんだあって、今日は疲れた。
「今日はお肉なんだよー。」
「そうか。じゃあ、着替えたら行くよ。」
一度部屋に戻り、体育着から部屋着に着替える。
それから食卓へ行くと。
「じゃーん!」
妹は照れ臭そうな笑みで立っていた。
七輪の中には炭火。
肉は牛タンや豚バラなどの肉。
本格的に肉を焼く気だった。
「今日はさっぱりしたものが食べたい気分だったから、タレじゃなくて塩なんだよ。」
ああ、そうか。
ところで、疲れている時にはがっつり食べたい人と、あっさりしたものが食べたい人がいると思う。
俺は後者だ。
つまり、そういうことだった。
「ありがとな。」
雫の頭に手を置いて、お礼を言う。
「ふぇ?な、何?」
妹は恥ずかしそうに戸惑っていたが、無視して食卓に着く。
「じゃ、食べようか。」
「あ、今日は私が焼くんだよ。お兄ちゃん、食べて食べて。」
「お、悪いな。でもお前もちゃんと食べるんだぞ。」
「勿論だよ!今日のお肉はいいもの買ってきたんだからね!味わって食べてよ!」
「あれ?レモンは?」
「ひゃっ!?わ、忘れてきちゃった!ちょっと待ってて、とってくる!」
こういう抜けたところが可愛くて、ついつい笑ってしまう。
でも。
こういう素直な好意と、美味しい食事、そして、こいつの笑顔だけで。
今日の疲れは、綺麗に吹き飛んでしまうのだった。

続く